A Study of Teaching Words in English Using Audiovisual Materials at Elementary School
(小学校における視聴覚教材を用いた英単語指導法の研究)

69期 AI 類 S. N.

Introduction

 2017年文部科学省は新学習指導要領を告示した。英語教育における改定点としては、小学校中学年で外国語活動、高学年で外国語が導入され、それに伴い語彙数の増加も期待されている。さらにコンピュータや情報通信ネットワークなどの活用に関する記述が顕著となった。しかしOECDの調査では、学校の外国語の授業でICT機器を使っていないと回答した生徒の割合は67%と低く、日常生活では多くの児童がデジタル機器を活用しているにもかかわらず、学習には十分活用されていないことがわかる。そこで私はこの論文で、視聴覚教材、特にICT機器の教育的効果やその特徴からどのようにICT機器を利活用して小学校英語教育を進めていくべきかについて考察する。またそれらを基にICT機器を用いた小学校での英単語学習法を提案する。

Chapter I Literature Review

 第1章では、第2章で提案する学習活動を補強するための先行研究まとめている。第一に、教育でなぜこれほどまでにICTが重要視されているのかを明らかにするため、21世紀型スキルの記述を引用した。そこで、子どもたちの汎用性を養う手段の1つとしてICTスキルを身に付けることを目的としていることが明らかになったことから、本研究では子どもたちに機器を操作させることに重きを置いた。更に自己決定理論、多重知能理論、マルチメディアの学習理論などを活動のデザインのための参考とした。自己決定理論が成立するには自律性、有能感、関係性の3つの欲求を満たすことが必要であり、中でも自律性は最も重要な要素であることが明らかになっている。多重知能理論からは、知能とは見えるものではなく、神経的な潜在能力であるということがわかった。人々は同じ知能を同じ組み合わせで持っているわけではなく、生まれながらに持った性質やその人物が発達する環境によって人間の知能の組み合わせは変化する。ここに子どもたちの発達の個人差や得意不得意の有無が見られると考える。これらのことを基に、子どもたちにできる限り多くの選択肢を与え、自律性を促すことで、子どもたち自身が楽しいと感じたり、進んで取り組みたいと思えるような学習活動を提案することにした。

Chapter II Method

 第2章では、第1章での先行研究を基に、オリジナルの学習活動例を提示した。対象者を小学校4年生とし、児童一人につき一台のタブレット端末の利用を前提としたアプリ型学習法を紹介した。まず学習者はタブレットの画面から流れる会話音声を聴く。次に会話の文脈から正解となる単語のイラストを選択し、指で操作する。更に学習者は、学習単語について「写真を撮る」「写真を貼る」「画像を探す」「イラストを描く」の4つから保存法を一つ選択する。最後に画面上から流れる学習単語の発音を聴き、学習者自身の音声を録音する。

Chapter III Discussion

 第3章では第2章で述べた活動についての考察をまとめた。この学習法の利点としては、教育にICTを活用することで、学習者の自由な選択を最大限可能にし、得意不得意などの個人差への対応、学習の個別最適化が期待できるということであるとまとめた。更に学習内容をデータ化し、ポートフォリオとして用いることが可能となる。また、マルチメディアによる学習は記憶にも効果的であり、繰り返し学習を行うことは長期記憶への移行を促すことが判明している。このことから、子どもたちはマルチメディアを通し、ゲーム感覚で繰り返し学習を行うことで、学習内容の記憶にも残りやすくすることができるということも特徴の一つとして述べた。

Conclusion

 教育にICTをはじめとする視聴覚教材を用いることは子どもたちの動機づけや学習効果を高めるために有効的であり、もちろんこのことは英語教育においてもあてはまるだろう。また世界的にデジタル化が進む現代において、今後学校でこのようなテクノロジーの活用が期待される。そこで教師が学校でICT機器を活用していくにあたって忘れてはならないことは「子どもたちが将来生きていくためのスキルを身に付ける」ということである。学校現場ではすでにICTテクノロジーの導入が進んでいるが、単にそれらの機器を用いれば良いというわけではない。子どもたちにどのようなスキルを身に付けるためにICTを活用するのか、明確な目的を持つことが重要である。この論文は小学校外国語活動にICTを活用することをオリジナルの教育方法を提示して述べた。この教育法が最も重視したことは子どもが学習の主体になるということである。一見、ICTは主に視聴覚的効果や教師の指導力向上が期待されるポイントとして挙げられやすいが、ほかにも様々な特徴がある。今回の活動は特に、ICTを活用した個別最適化、振り返り学習に注目し、子どもたちが英単語を学習する中でICTを用いてしかできない活動を取り入れた。その結果、活動では、機械的な学習になりやすい英単語学習をより柔軟かつ活動的に行うことを可能にした。この活動は実践することができなかったため根拠としてはまだまだ不十分であるが、学校でICTのような視聴覚教材を活用するうえで重要な視点を踏まえた活動である。そうした点で今回のテーマは今後の英語教育にも貢献することのできる議題であったといえるだろう。