A Method of Teaching English Word Order at Elementary School: Special Focus on SVO Construction
(小学校外国語科におけるSVO型に焦点を当てた語順指導法について)

69期 AI 類 A. S.

Introduction

 2020年度から新学習指導要領が施行され、小学校5・6年生で英語が教科となり、グローバル化する社会の中で英語力の向上は極めて重要である。しかし小学校教師のうち中・高等学校英語免許状を所有している割合が非常に少ないことから、効果的な英語の指導法を考えることの意義を感じた。本稿では、学習指導要領の「日本語と英語の語順の違い等の気付きを促す」という記述に注目し、語順の違いに気付かせるための様々な工夫を取り入れた教授法を提案していく。

Chapter 1 Literature Review

 第1章では、先行研究を踏まえて考えたことを述べている。まず小学校英語の教科書の5文型の登場数を調べた。その結果SVO型が最も数が多いことがわかり、小学校英語ではSVO型を習得することが大切であると考え、本稿ではSVO型に焦点を当てることにする。また英語のエラー分析の研究結果によると、母語の影響を受けたエラーは少ないことが分かった。しかし日本の小学生の場合は、英語に触れる機会が多くないため、日本語の影響を受けた英語のエラーが起こりやすいのではないかと考える。さらに「気付き」にはメタ認知が関わっていることが分かった。児童自身が考える中で自然な「気付き」に繋げる指導をすることが必要であると考えられる。

Chapter 2 Methodology

 第2章では第1章の先行研究を踏まえ、作成したワークシートや確認テストを使った独自の方法論を述べている。第6学年を対象とし、物語の挿絵をみてそれに合う英文と日本語文を書き、線で結ぶことで語順の違いに気付かせるという活動を取り入れた。児童に主語・動詞・目的語の3つの要素を入れた文を作成させるために、「絵に合う英文を書きましょう。」ではなく「登場人物は何かな。何をしているのだろう。」という設問を設定した。最後にこれまでの学習を通して考えたことや感じたことを書く欄や友達と話して考えたことや感じたことを書く欄を設けた。ここでは「気付きを促す」ための工夫として、教師に言われて気付くのではなく児童自身が考えて気付くことを大切にしたいと考えたため、「気付き」という言葉の使用を避けている。また、児童が語順の違いを理解し、習得できたかを確かめるために、授業の最初と最後に同じ内容の確認テストを行うようにした。

Chapter 3 Discussion

 第3章では、第2章で提案した方法論を様々な観点から考察している。まず確認テストの結果は児童の性格的特徴や知能が関係しているのではないかということである。しかし先行研究ではエラーの原因を決定づけることは難しいと述べられていることから、テスト結果と児童の特性との関連性を断言することはできないと考える。次に線を引く活動によって、動詞と目的語の語順が違うことが視覚的にもわかりやすいと考え、既有知識と新情報を結び付けて考えさせることで気付きへとつなげるようにしている。学習を通して考えたことや感じたことを書く活動では、児童自身による自然な気付きを大切にするために、「気付き」という言葉の使用を避けている。また仲間との意見交流を通して、一人で考えていた時に分からなかったことに気付くことができたり、他人に教えることも理解がさらに深まったりすることが期待できる。一方、ここで提案した授業法は実践、検証し、その結果を分析することができておらず、科学的な根拠を示すことができていないことが限界点として挙げられる。またこの授業法によって児童全員が語順の違いに気付くことができるとは言えず、児童間で理解度に差が生まれることが予想される。そのため各学校の英語教育の取り組み方や児童の特性に応じて、使用する単語や教材を変える必要があると考える。

Conclusion

 本稿では様々な先行研究を踏まえながら、SVO型に焦点を当てた語順指導法を提案してきた。第3章でも言及しているが、英語と日本語の語順の違いに気付くための工夫が取り入れられた指導法を実践できていないことが最大の問題点であり、この指導法の効果を断言することができなかった。そのためこのままで終わることなく、今後この指導法を実践し、より効果的なものにするために改善を重ねていきたいと考える。