The Role of Self-Esteem in Learning English
(英語学習における自尊心の役割)

69期 AII 類 C. G.

Introduction

 人々はコミュニケーションを図るために言語を使用する。自分の意見や考えを正確に伝えるために用いられるため、「自分自身」と切り離して考えることができない。そのため、英語のスピーキングのような表現行為と自尊心は密接に関係していると考えた。私自身、自分に自信を持てず、日本人の前で英語を話すことを難しく感じた経験がある。そこで、英語を学習するにあたり、自尊心が英語学習においてどのような役割を果たすかを考察する。そして、教師が授業の際に生徒の自尊心を損なわずに学習効果を高める方法についても論じていく。

Chapter I

 第1章では、日本人にとって自尊心とはどういうものかについて考える。自尊心とは、長所と短所を含めて自分が価値ある存在だと理解する前向きな気持ちであり、それは一時的なものではなく比較的安定したものである。しかしながら、内閣府の意識調査によると、日本の若者は諸外国に比べて自尊心が低いという結果がある。その要因は日本の謙遜文化・恥の文化によって日常的に耳にする否定的な言葉、SNSの発達によって他人と自分の比較が容易にできるようになったことがあげられる。これらの文化や時代の流れの中で、自分を過小評価したり、他人の評価基準に振り回されたりする中で、自尊心が低下する

Chapter II

 第2章では、自尊心とスピーキングの関係を調べるためにアンケート調査を行い、結果を考察する。回答者は102名の中学生(1年生:82名 / 2年生:8名 / 3年生:12名)。アンケートの質問は計14問で、内訳は次の通りだ。自尊心の高さを測る質問4問、英語を積極的に話そうとする態度(英語発話態度)を測る質問4問、教室で話したいと思うスピーチ題材を探る質問4問、自由記述2問である。アンケートの結果を考察すると、1つ目に、自尊心が高い生徒は言語やスピーチの題材を問わず、何らかの形で自分を表現する行為を行いたいと考える傾向があるということが分かった。反対に、自尊心が低い学生は、高い生徒に比べてどのスピーチ題材に対しても消極的であった。しかしこれは、スピーチの題材によって生徒の自尊心が大きく脅かされる危険性が低いとも捉えられる。2つ目に、自尊心と英語発話態度は弱い相関関係にあった。この2つの結果から、教師はどんな内容を話させるか、よりも生徒の自尊心を脅かさない授業つくりや、発話を促すことに注力することが望ましい。

Chapter III

 第3章では、これまでの章を踏まえて、実際のスピーチの授業に活かす工夫について述べる。スピーチの授業となると、スピーチの内容や話し方など、話し手のことばかりに注意が向けられる。一方で、多くの生徒が聞き手の反応や態度に不安を覚え、スピーチにやりづらさを感じているが、聞き手の態度については指導しない場合が多い。2章で明らかになったように、自尊心と英語発話態度は弱い相関関係にあるので、もし、聞き手の態度によって話し手の自尊心が傷付けば、英語発話態度も下がる可能性はある。話し手が話しやすいクラスの雰囲気を作るだけでなく、聞き手の批判的思考を深めることにも繋がるため、聞き手の態度を養うことは重要であると考える。教師は、生徒の学習段階に応じて評価基準を明確に示し、話し手も聞き手も文法ミスや発音に必要以上に囚われることなくスピーチを行う環境を作るなどの工夫もできる。

Conclusion

 第1章から3章にかけて自尊心が英語学習に与える影響について考察してきた。弱い相関ではあるが、自尊心と英語を話そうとする態度・スピーチの題材に関係があったことは無視できない。教師はまず自尊心を傷付けない授業作りを目指した上で、クラスや学年に適した題材を扱うべきである。アンケート調査では学年に偏りがあったので、学年を分けて人数を揃えて調査を行えば結果は変わったかもしれない。昨今は英語のスピーキング力と多種多様な個性はますます重視されるようになっている。今後も自己表現の力、そして表現する自分自身を尊いと思う心に関する研究を続けていきたい。