Teaching Food Culture in English Class in Junior High School as Intercultural Education
(異文化間教育としての中学校における英語の授業での食文化指導)

69期 AII 類 M. O.

Introduction

 私は海外旅行や短期留学を経て異文化に触れ、自分の考えが当たり前ではなく、多様な文化が世界にはあるのだと実感し、異文化や日本の文化に関心を持った。また、異文化間理解があれば、学校教育でも求められている、他者への思いやりや配慮の心も身につけられることから異文化間教育の重要性を感じた。異文化間理解を深めるにあたり、関心を持ちやすいテーマとして「食文化」を選び、限られた時間の中で十分に異文化間教育を行うために、時間の差のない外国語(英語)の授業内で異文化間教育ができないか、どのように行うか探りたいと思う。

Chapter I

 1.1 Relation between Intercultural Education and Food
 ここでは、異文化間教育と食の関係について述べた。文部科学省でも述べられているように、グローバル化が急速に進む中で外国語でのコミュニケーション能力が以前より必要とされているが、十分なコミュニケーションには偏見のない「相互理解」をすることが必要と考える。そのため異文化間教育の中で異なる文化に寛容な心や正しい判断力を養うことが重要である。学校で学ぶ外面的文化要素(瀬田, 2007)として、小中学校どちらでも「食」が含まれており、児童生徒にとって食は身近なものと考えられる。よって異文化間教育と食を繋げた指導が有効と考えられる。

1.2 American Food Culture
 ここでは、アメリカの食文化について述べた。アメリカは、英語を母語とし、日本の英語の教科書でも多く扱われているため、アメリカを選んだ。ジャンクフードがイメージしやすいが、バッファローウィングといった伝統的な食べ物もあることや、日本の行事と全く違う行事に思えても共通点があり、固定観念を持ってしまっていることもあるとわかる。

1.3 The Spread of Japanese Food in the United States of America
 ここでは、アメリカにおける日本食の広がりを述べた。橋本(2003)によるとアメリカ人の3人に一人が太りすぎ、5人に1人が肥満という結果がある。健康意識の多管理から日本食に注目が集まり、スーパーマーケットやチェーン店の進展が見られる。このように外国の影響を受けながら食文化が発展している。

1.4 Japanese food Culture
 ここでは、日本食の歴史について述べた。原田(2012)によると、最古の日本料理は大饗料理と言われている。和食のイメージがある日本だが、大饗料理は朝鮮半島経由で伝わり、外国の影響を受けながら食文化が発展している。日本の文化についても固定観念を捨て、見直していく必要があると考える。

1.5 The Spread of Western dishes in Japan
 ここでは日本における外国の影響について述べた。例えばカレーライスやコロッケは和洋折衷料理と呼ばれ親しまれている。また、家庭料理の洋食化によって米の消費量が減少している。このように日本とアメリカの食について調べただけでも固定観念を持つ可能性のあることがわかる。そのことを教師が認識し、正しく生徒に指導する必要がある。

Chapter II English Textbooks at Junior High Schools in Japan

 異文化間教育を英語の授業で行うことを考えると、英語の教科書が活用できると考え、教科書を分析した。瀬田(2007)によると文化は異文化間理解教育の文化要素の観点から外面的文化要素と内面的文化要素に分けられる。この観点を基に中学校1年生の教科書を分析すると「内面的文化要素が少ない」、「全ての教科書で食に触れる内容がある」、「その中でも日本食が多い」ことが分かった。
 また、食に触れている中学校の教科書をピックアップし、「その内容の視点がどの国か」を分析する観点とした。(@)次の分析は、酒井(2014)による「英語科において異文化理解を扱う際に心掛けたい3つの側面(認知、情意、行動)」を観点とした。(A)この3つの側面に沿って異文化間教育ができると適切に異文化間理解ができると考える。

Chapter III Teaching food Culture in English Class at School

 ここでは、上記の分析の結果わかった事や疑問点を述べた。分析@で気になったことは視点が日本や英語を母語とする国に偏っていることと、外国人生徒が日本の食べ物を食べておいしいと話すことである。これは偏見や誤解を生む可能性があるため、より広い視野を持ち、公平な判断ができるよう教師からの声掛けやサポートが必要となる。
 授業では、新聞の記事など教科書以外の教材を利用しても良い。これはよりオーセンティックで生徒の印象にも残りやすく、文化について深く考えるきっかけとなるだろう。また、指導の流れの工夫を行うこともできる。上記の3つの側面に沿って、共通点や相違点を気づかせ(認知)、もっと知りたいという意欲を持たせ(情意)、実際に調べたり話を聴かせる(行動)ことで深い理解に繋がると考える。外国語の学習要領でも異文化間教育は重視されており、英語の授業を通して多様な文化の理解を深めることが求められているため、教師は異文化間教育の重要性を理解した指導が必要である。

Conclusion

 異文化間教育を学校で行う時間は限られており、食文化について触れる英語の教科書が多いことから、食文化を通した異文化間教育を行うことが可能だと考える。また、固定観念や偏見を持つことなく、異文化間教育によって、生徒のコミュニケーション能力や他者への思いやり、配慮する力も身につけさせることを意識した指導が重要である。