How to Teach English at Elementary School from a Viewpoint of Cross Curriculum Leaning
(教科横断型学習の視点からの小学校英語教育)

69期 AI 類 S. I.

Introduction

 2020年度から小学校の英語教育が早期化・教科化している。さらに、グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。しかし、そういった状況でありながらも、日本人の英語能力は問題があるといわれている。こうした背景を踏まえ、早期化・教科化された小学校の英語教育をどのように行えばよいのだろうか。
 本研究の意義は、上記の状況において、小学校での英語教育について、一つの方法を提案することである。本論文で提案するのは、学ぶ内容と言語教育を組み合わせるCLILという教授法をベースとした、教科横断型の英語教育法である。教科横断的に学ぶことによって、英語学習が苦手な児童も授業に入り込みやすくなり、また、児童は様々な文脈で英語を用いることができ、英語の汎用的な活用法を習得することが期待される。このような効果が期待されるとはいえ、すべての問題に対応するような万能な教授法というものは、そう簡単に考え付くものではない。本論文で提案する教授法にもいくつか欠点が存在するだろう。しかし、提案する教授法は、一つの可能性として、これからの小学校英語教育に貢献することができるだろう。

Chapter I Literature Review

 第一章では、提案する教授法を支える先行研究を紹介する。本論文で提案する教授法はCLILをベースとしているため、CLILの理論、そして可能性を論じる。しかし、CLILの理論だけでは、教授法として理論的に弱い部分が存在する。さらに、CLIL自体も万能な教授法であるわけではなく、いくつかの課題がある。そこで、本論文ではいくつかの理論(Focus on Form, Active Learning, Taxonomy, Learning Assessment, Metacognition, Meaningful Learning, Scaffolding)を用いることで、CLILをベースとした教授法を理論的に強化しようと試みている。

Chapter II Methodology

 第二章では、第一章で挙げた先行研究の理論に則り、小学校での英語教育のひとつの方法を提案する。本論文で提案するのは、英語教育と社会科を統合した方法である。対象は三重県津市の小学校で行うことを想定とし、扱う内容は地理分野を扱う。CLILをベースとしているので、CLILの核となる理論の「4つのC」を中心に扱う内容、言語、活動内容や評価方法を決定する。こうしたCLILの理論を中心とした授業構成に、第一章で紹介したいくつかの理論を絡ませていき、理論的に強化していく。ただし、本論文では実践に移すことができておらず、あくまで提案という形で終わってしまっているが、実際に現場で行う際は、対象の児童のレベルに合わせて、どれだけ英語を用いるかという点に関しては調整する必要がある。

Chapter III  Discussion

 第三章では、第二章で提案した方法論が先行研究に則っているか、また、研究の限界点を論じる。本研究では方法論を実践に移すことができていないため、その確かな効果は立証されていないが、第一章で挙げた先行研究に則ることによって、その効果は理論的に証明されるだろう。しかし、理論的には効果的な能性があるが、大きく三つの課題があるだろう。一つ目は、授業準備に時間がかかってしまうこと。二つ目は、児童間の教え合いというものがどこまで成立するかという問題。そして三つ目は、英語を他教科の内容に組み込むことによる児童の負担である。一つ目と二つ目の課題に関しては、これからも研究を進めていく必要があるだろう。三つ目の課題に関しては、今回提案する方法論は、たった一回の授業で扱う英語表現や単語を習得しきるというものではなく、継続的にこの形態の方法を行うことで習得していくという考え方であるため、相対的に一つの授業での負担というものは軽くなるのではないだろうか。

Conclusion

 本論文で提案した方法論は、CLILをベースとした教授法に幾つかの理論を用いることで、その効果が裏付けられ、またCLIL自体が抱える欠点にも働きかける事ができていると言えるだろう。ただし、何度も繰り返しになるが、本論文内では実践に至っておらず、その効果に確証はない。本研究は、本論文にとどまることなく、提案した方法論を実践に移し、その効果と欠点を明らかにすることが必要である。また、本論文では、英語と社会科のみの統合であったが、今後の研究でそのほかとの教科との統合にも挑戦し、本方法論の可能性を広げることも必要である。実践を行なっていないため、研究の問題点は多く存在するが、理論的には効果が得られる可能性は十分あると考えられる。そのため、問題があると言われている、日本の小学校の英語教育に対して、一つの可能性を提案するという点では、価値がある研究なのではないだろうか。