The Significance of Content and Language Integrated Learning at Elementary School
(小学校でCLILを用いることの意義)

68期 AI 類 N. K.

Introduction

 2020年から、小学校に置いて外国語が教科化され、英語教育への注目が集まっている。実際私は何校かの小学校に外国語活動・外国語科の授業を見学しに行ったが、子どもたちが楽しそうに授業を受けている様子が数多く見受けられた。しかし、それらの授業は、チャンツやゲーム等、遊びを中心とする授業が多く、コミュニケーションの素地を育てるという外国語活動の目標に果たして達成できているかが疑問に残った。そこで私はこの卒論で、現在の小学校英語教育における課題、そして近年英語教育において注目されているCLIL(内容言語統合学習)を用いることにより得られる利点や、課題を分析していく。

Chapter I The Problems for foreign Language and Foreign Language Activities

 Chapter 1では、現在の小学校英語教育における課題を分析していく。一つ目の課題は、英語嫌いの子どもが増加している点だと考える。理由としては、小学校と中学校での、英語の授業における内容の差が挙げられる。文部科学省の調査によると、小学校から中学校に上がると、英語が好きな子どもが2割減少しているため、根本的な授業の見直しをしていく必要があると考える。
 二つ目の課題は、子どもの興味関心に沿った授業ができていない点だと考える。さまざまな教育者が、英語の授業内で行われるゲーム等の活動の観点や、発達段階の観点から考えても、子どもたちの興味関心に沿うことができていないと指摘している。
 三つ目の課題は、授業の活動がコミュニケーション能力や言語習得につながっていないことだと考える。和泉(2013)は、言語習得に必要な要素として、言語形式・意味内容・言語機能の三つを挙げ、これらの要素が結びついていないがために、不自然な状況においてのコミュニケーション活動や意味や場面を考えない機械的ドリルなどの活動が目立ってしまうと指摘している。以上の点から、小学校英語教育には、教科化を目前に数多くの課題があることがわかる。

Chapter II The Advantages of Content and Language Integrated Learning at Elementary School

 Chapter 2では、近年英語教育の中で注目されているCLIL(内容言語統合型学習)を小学校外国語の中で取り入れていくことによる利点を考えていく。そもそもCLILとは、笹島(2011)の定義によると、「教科科目などの内容とことばを統合した学習」である。4Cと呼ばれる4つの枠組みがあり、それらの枠組みに沿って授業を編成していくため、さまざまな効果が期待されている。
 CLILがもたらす利点としては、児童の興味を引く内容を使って授業を行うことができること、言語活動を促進することができること、思考活動を促進することができること、協同学習を充実させることができること、異文化理解を深めることができることが挙げられる。CLILは、教科やテーマなどの内容と、言語の両方に焦点を当てる学習方法である。よって、子どもたちが内容に興味を持つことができれば、自然とCLILを用いた外国語学習に前向きになることができる。

Chapter III The Problems of CLIL and my Suggestions of CLIL Classes at Elementary school

 CLILはまだ日本で広がって間もないため、課題の指摘は数少ない。Chapter3では、さまざまなCLILの課題を指摘し、よりよいCLILの用い方を考えていく。 CLILの課題としては、実践する時間があまりないこと、内容と言語のバランスを保つのが難しいこと、子どもに対する負担が大きいこと、教員の負担が大きいことが主に挙げられる。教員の仕事の多忙化が深刻になっている今、内容の質や組み立てが大切なCLILを用いて1から指導案を作成するのはかなり難しい。また、内容と言語の両方に焦点を当てるため、子どもに対する負担も大きくなってしまう。CLILを使って外国語教育を行っていくためには、教員同士の連携や、CLILの勉強会等を通した共通理解が大切になる。
 では実際の学校現場で、CLILをどのように用いればいいのか。私はこの卒論の中で4つの提案をした。CLILの4つの枠組みの中の1つであるCognition(思考)を活かした「社会科を中心としたCLIL授業」、学習成果や達成感を生み出すオーセンティックな教材を用いた「教科書以外を内容に据えるCLIL授業」、ICT教材等を用いた「海外の交流授業を通じたCLIL授業」、一人一人の強みを活かした「協同学習を通じたCLIL授業」である。CLILの4つの枠組みをうまくつなげながら、出来るだけ教員や子どもの負担を減らしていけるような授業づくりをしていくことが大切である。

Conclusion

 CLILは、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を実現するための一つの方法としてとても有効であると考える。またCLILを用いた授業を行っている学校が増えており、実践例も報告されている。しかし、CLILを用いた授業は、相当な技術や膨大な時間を要すると予想されるため、すべての授業をCLIL化していくのは厳しいと考える。まずは授業の一部分に少しずつCLILを取り入れていくことが大切である。また、今後実際に現場でCLILを用いる場合、言語と内容のバランスをより深く考えたり、子ども達の興味関心や知的発達レベルに合った内容を考えていきたい。また、実際の子どもたちが考えるに値するような発問の工夫や、グループ学習のタイミングなどを再度考察していきたい。