Using Katakana in Teaching English Pronunciation to Young Students
(児童を対象とした英語の発音指導におけるカタカナの使用について)

67期 AI 類 M. W.

Introduction

 日本語の表記体系の一つであるカタカナは、表音文字であり主に外来語や擬態語を表すために用いられている。そのカタカナの特質が活用され、日本ではカタカナが英語の発音を表すための一つの手段として使われていることがある。英語の教科書においては、どの教科書にも小・中学校共にカタカナによる発音表記はなされていなかった。しかし、一部の英和辞書・英語教材・問題集に関しては英語の発音を示すためにカタカナが用いられていた。英語の初学者に対する配慮の一手段であると考えられる。英語の学習者にとってカタカナによる発音表記はある意味身近なものであるということをうかがうことができる。
 これらの事実を踏まえて、この卒業論文では、

  1. 発音記号の代用としてカタカナを用いることによる影響
  2. 英語と日本語における音韻論的な違い
  3. 英語の発音指導の改善策
について考えていく。

Chapter I Merits and Demerits of Using Katakana to Show English Pronunciation

 Chapter 1では、英語の発音表記としてカタカナを用いることのメリット・デメリットについて考えていく。メリットの一つは、英語は発音が困難な言語であるという不安を児童の英語への不安を軽減することができる。GMOの調査によると、日本人の60%以上が英語をうまく使いこなすことができないと感じている。日本人が英語を使いこなすことができていないと感じる要因の一つとして、英語の発音の難しさが挙げられている。(36.7%) カタカナを用いることで英語の発音に対する抵抗感を軽減されると考える。メリットの二つ目は、英語の発音が分からないが故に英語によるコミュニケーションをとることができない児童にとっての補助手段となることである。国際化が進む現代において、英語によるコミュニケーションを要する機会が増えている。英語を話すことができないからといって黙り込んでしまってはコミュニケーションは成立しない。そのような場面において、カタカナを読み上げて会話をしようと努めることは有効である。
 デメリットの一つは、英語の上に施されたカタカナを読むことに慣れてしまうことで正しい英語の発音を獲得することが困難となる。英語とカタカナを表記体系として持つ日本語は音韻論的に異なる部分がある。カタカナを目にすることで、日本語らしい発音やイントネーションが思い起こされてしまう。デメリットの二つ目は、カタカナ読みに慣れることで正しく英語を聞き取る力が衰えてしまう。日本人がカタカナで英語の発音を覚えていたとしても、カタカナ英語と本来の英語の発音のギャップがあるため適切に聞き取ることができない恐れがある。

Chapter II Do Katakana Substitutes Represent Correct English Pronunciation?

 Chapter 2では、日本語と英語の音韻論的な違いの中でも特に母音と子音の違いと音節の違いに焦点を当てる。初めに日本語と英語の母音と子音の数の違いについて考える。日本語の母音の数5音に対し英語の母音の数は約20音、日本語の子音の数約13音に対し英語の子音の数は約24音であり、英語は日本語よりも母音と子音共に種類が多い。そのため、日本語では表すことができない英語の母音と子音が存在する。具体的な例を挙げると、"hat"、"hot"、"hut" の異なる母音を「ハット」としか表すことができず、"right"、"light" の異なる子音を「ライト」としか表すことができない。母音・子音の数の違いが、英語の発音をカタカナで表すことの難しさに繋がっている。また、二重母音の概念についても異なっている。英語の場合は二重母音は絶対的なものとして存在しているが、日本語における二重母音は連母音へと変容し得る。カタカナで発音が表記されている際に、二重母音を連母音であるかのように発音すると異なる発音へ化してしまう。
 音節の違いについて、日本語はカナ(カタカナ)1文字=1音節であるのに対し、英語は1音節に2字以上の母音と子音を含み得る。1音節の語尾に着目すると、音節の終わりが母音で終わることが多い日本語に対し、英語では子音で終わる単語が多く存在する。そのめ、語尾が子音である英語の発音を母音で終わるカタカナを使って示す際に困難が生じる。また、3音節の英単語をカタカナ6字(=6音節)で表している事例もあり、音節数の不一致によりイントネーションを的確に示すことができない現状もある。

Chapter III How should the English Pronunciation be Taught?

 Chapter 3では、発音指導の手立てとしてPhonicsと発音記号の視覚化を提案する。Phonicsとは、綴り字と発音の間の関係を示唆する方法のことである。数多く存在するPhonicsルールを導入するためには、rhymeの活用が有効であると考える。同じrhymeを持つ英単語をグループ化してまとめ規則性を学ぶのである。発音記号の視覚化とは、口を大きく開く、唇を前に突き出すなどの口の動かし方を、○や◎などの記号を用いて示すことである。似たような発音を持つ英語もこのような記号を用いることで、微妙な発音の違いを示すための発音の方法を伝えることができる。

Conclusion

 研究を通して、英語と日本語の音韻論的な違いにより、カタカナを用いて英語の発音の違いを示すことがわかった。特に教師という立場の人間がカタカナを用いて英語の発音を示してしまうと、児童はカタカナ読みは正しい英語の発音であると捕らえてしまうがために教師は極力このような手立てを使うべきではないと考える。しかし、自分が耳にした音を思い出すためのリマインダーとしては有効な手段の一つではあるため、カタカナを用いる場面は使い分けるべきである。