Relation between Sports and Second Language Acquisition
(スポーツと第二言語習得の関係)

67期 AII 類 E. M.

Introduction

 日本や世界のトップアスリートで、複数言語を操る選手が多々見受けられる。日本人サッカープレイヤーの長友佑都はイタリア語を話すことができ、アメリカ人テニスプレイヤーのセリーナ・ウィリアムズは母国語の英語のほかにスペイン語、フランス語、イタリア語でインタビューに答える。日本では相撲界で活躍する外国人力士がたくさん存在する。モンゴル出身の朝青龍や白鵬などはインタビューでは必ず日本語で受け答えしている。そこで、スポーツをすることが第二言語習得に肯定的な影響をもたらしているのではないかと仮定した。本論文の目的は、スポーツと第二言語習得の関係を明らかにし、効果的な第二言語習得の方法を、スポーツの観点から考えることである。

Chapter I 

 この章では、バイリンガルアスリートの第二言語習得の特徴を2つ挙げて考察した。まず1つ目は、環境についてである。例えば外国人力士は相撲部屋に入ると、周りを、日本語を話す人に囲まれる。親方や兄弟子、おかみさん、床山、行司、呼び出し、部屋がある地元のファンの方々、それ以外にもちゃんこ番になると近所の商店街に買い出しに行かなければならない。店の人に日本語でやり取りし、目的のちゃんこ鍋の具材を自力で揃えなくてはならない。このように、外国人力士は日本語を母語とする人々との関わりが非常に多い。まさしくイマージョン教育に似た状態である。一般的な言語学習者よりも実際に日本語を聞いて、使う機会が多いことが特徴である。2つ目は、動機づけについてである。アスリートは競技が上手くなりたい、もっと活躍したいという強いこころざしを持っている。海外で活躍する選手などは、チームメイトとのコミュニケーションが欠かせない。それに伴って、彼らの背景にある文化や行動様式を知ることも必須となる。ゆえに、スポーツ活動を円滑に進めるための道具として言語を学ぶ。だから言語の習得が加速されるのである。

Chapter II

 この章では、アスリートに特徴的とされる性格と外国語学習に有利と考えられている性格要因を照らし合わせて分析した。まず、自分に自信がある人は第二言語習得が成功しやすいと考えられている。アスリートは試合で負けて多くの挫折を経験することで挫折への対処法を学び、自信をつけていると考えられる。ほかにも、スポーツにおいてはチームメイトがどういったことを考えているのか、互いに推し量ることが大切である。相手の立場をよく把握できる学習者は円滑にコミュニケーションを図ることができて、第二言語の習得も速くなる。これらのように、スポーツを通じて人間力の向上を図ることが、語学力の向上に役立つことがいえる。

Chapter III

 この章では、スポーツの熟達と、第二言語習得の過程の類似について比較分析した。スポーツにおける技の熟達とは、まず理想のフォームをイメージし、それを反復練習する。その過程でフィードバックを行い、修正する。このサイクルを回すことで技術の習得が成される。これは第二言語習得の過程と類似している。まず言語のインプットをし、自分の中に取り込む。そして発話の前に頭の中でリハーサルを行い、アウトプットをする。そして相手からのフィードバックをもらうことで言語習得が成される。また、スポーツにおいては目標達成のために目標設定、過程のモニター、成果の評価というメタ認知が欠かせない。これは言語習得の場面でも同じことが言える。学習者は言語の習得のために自己調整学習を行いながら自分に適した効率的な学習方法を選択、継続していくことが重要である。

Conclusion

 よりよい第二言語習得の方法とは、積極的に海外に出て、教室の外で目標言語を聞いたり話したりする機会を多くもつことが重要である。また、スポーツや仕事で成功したいという強い動機づけを持って、そのための道具として言語を学ぼうとすること。そして、スポーツを通じて人間力の向上を図ることが、語学力の向上に役立つといえる。また、明確な目的と目標を設定し、自ら学習する態度を身につけることが大切である。学習の過程では、大量のインプットとアウトプット、フィードバックと修正を行うことで、言語を無意識に使えるようになり、言語習得が効果的に成されるようになる。