The English Education for Autistic Students in Junior High School
(中学校における自閉症生徒への英語教育)

66期 AI 類 Y. S.

Introduction

 私は、中学校における自閉症生徒への英語教育について研究した。近年、自閉症数が急増しており、約6.5パーセントの割合で通常の学級に自閉症の生徒が在籍しているという調査結果がある。これは、学級に2人程度は自閉症の生徒がいるということになる。私自身、担当した学級で自閉症生徒に出会った経験があった。しかし、その経験を通して、自閉症への理解不足を痛感した。そこで、自閉症の特徴や適切な教育方法を模索するために、自閉症について分析するに至った。

Chapter 1 Autism Enigma

 自閉症はいまだに曖昧で、特性は不明確なものであり、人によって現れる症状も異なると言われている。そのため、多くの謎がある。その謎を考察することが自閉症理解につながると考えられる。この章では、2つの主要な謎である自閉症の増加と自閉症の原因について言及した。
 
<自閉症の増加>
アメリカ:5000人に1人(1975)→68人に1人(2012)
 増加の原因の中で、私は診断の正確性に焦点を当てた。DSM4(2000)では、精神病は5種類に分類されていたが、DSM5(2013)では、レット症候群以外の4つが自閉症スペクトラム症候群として一つに統合された。そのため、自閉症と診断される人が多くなったと考えられる。

<自閉症の原因>

  1. ミラーニューロン仮説:自閉症の生徒は、相手の気持ちを考える事に必要な細胞であるミラーニューロンが少ない、もしくはミラーニューロンが正確に機能していない。
  2. 心の理論仮説:自閉症の生徒は、生来的に備わっている直観的な精神機能である心の理論の習得が一般的な発達よりも遅い、もしくは、多少異なっている。

Chapter 2 The Advantage and Wishes of Autistics

 この章では、自閉症の症状と、自閉症の男女差、そして自閉症の生徒の望みについて考察した。症状を3つに分類すると、社会的困難、コミュニケーションの困難、興味の狭小化となる。その他の症状には、繰り返し行動、感覚の過敏性、言語障害などがある。Cowleyによると、自閉症の人のうち5人に4人が男性であり、CDCの調査(2012)によると、男性は42人に1人、女性は189人に1人が自閉症であり、4.5倍男性の方が発症しやすい。Baron-cohenによると、原因は、自閉症の脳構造が極端に男性に似ているためであり、ここから、自閉症を持つ人々が、共感力は低いが、物事を体系的に捉える能力(systemizing)が高いことがわかった。また、Notbohmが示した自閉症の生徒の10個の望みを紹介し、この10の望みから、自閉症はその人の一部であり、その人自身ではないこと、そして、自閉症の生徒の行動には必ず理由があるということを言及した。

Chapter 3 The Tips for Teaching English to Autistic Students

 この章では、自閉症の特徴や自閉症の生徒の望みを考慮した上で、より効果的な教育方法を模索した。この方法は、自閉症の生徒だけでなく、他の生徒にも役に立つものと考える。教育方法を考える上で、環境的側面、指示の出し方、4技能に着目した。環境的側面に関しては、自閉症生徒は、感覚の過敏性を有するため、生徒にとって適切な環境整備が必要である。また、視覚優位であるため、視覚的教材の使用は非常に効果的であるが、過度な使用は逆効果となる。さらに、自閉症の生徒は非言語的な方法でコミュニケーションを図ることが多いため、生徒の行動を見やすい前列に座らせることも効果的である。指示の出し方に関しては、短く、明確に出すことが重要である。さらに、自閉症の生徒は視覚的な情報を指示に加えると理解しやすくなる。また、Notbohmによって提唱されたfirst-then strategyも効果的である。この方法は、連続的な流れを示し、自分がしなければならないことが明確になるためである。また、英語の4技能に着目して考察した。ここでは、自閉症生徒の感覚過敏性を和らげる工夫や、コミュニケーションの困難を考慮する事が重要であると考えた。

Conclusion

 全ての生徒が他の生徒とは異なっている。自閉症はその人の特徴の一つにすぎず、一人一人が持っている個性である。生徒の気持ちに寄り添って、生徒の能力を信じる事が重要である。自閉症の生徒は学習に多くの時間がかかるため、適切な支援をすることで学習を促していくことが必要である。