A Study of Early English Education
(早期英語教育の研究)

66期 AI 類 A. T.

Introduction

 2020年から小学校の3・4年生で外国語活動、5・6年で外国語の授業が始まったり、子どものうちから英語を習わせる家庭が増えていたりと児童英語への関心が高まっている。この卒業論文では、子どもに英語を学ばせる親が増えている理由、早期英語教育の利点、子どもに英語を教えるために適した教材や親が取り組むべき働きかけの3点を考察する。ここでいう「子ども」は0から6歳の子どもを指す。この年齢に設定した理由は、人間は6歳で絶対音感がなくなってしまうことと、小学校に通う前で本格的な勉強が始まっていない子どもたちに何かを学ぶという刺激を与えるのは親であると考えるためである。

Chapter I

 この章では、子どもに英語を学ばせる親が増えている理由を、英語が重視される環境と親が持つ英語コンプレックスに焦点を当てて考察する。中学校、高校、大学や大学院では英検やTOEICの点数が入試や単位認定、奨学金などにおいて有利にはたらく場面が増えている。上場企業においても、英語力を新入社員の採用や昇進・昇格の際に参考にしている企業が増えている。英語力が進学や就職に関わる機会が増えることで、子どもの将来を心配して、子どもには英語ができるようになってほしいと思う親が増えることは不思議なことではない。また、95%の日本人が英語コンプレックスを持っているといわれている。そして、英語コンプレックスを持っている親は子どもに英語を学ばせようとする傾向がある。自分が受けたような英語で不自由した思いを子どもにはしてほしくないと思い、子どもに英語力を身につけさせようとする。これらより、英語を習わせたいと考える親が増えている。

Chapter II

 この章では、早期英語教育の利点を、子どものリスニング能力、子どもと大人の脳波の違い、子どもの性質、人間教育としての効果に焦点を当てて考察する。第一に、人間は聞き慣れた音以外の音は聞き取れない。しかし、6歳までの子どもは絶対音感があり、英語が音やリズムとして頭に入るので、英語を正確に聞き取ることができる。第二に、子どもの脳はα波が流れており、潜在意識が働いている。大人の脳はβ波が流れており、顕在意識が働いている。β波よりもα波が流れている時の方が、90倍もの学習効果がある。つまり大人よりも子どもの方が学習の効果が高くなる。第三に、子どもは受容の天才で、好奇心という素晴らしい才能があり、勇敢でミスを恐れないという性質がある。英語が子どもの好奇心を刺激すれば、子どもはより英語を学びたいと思い、またミスを恐れず英語を使おうとするので、英語の力が伸びやすい。第四に、早期外国語教育は人間愛や友情を育んだり、異質な環境への適応性を高めたりと、小中学校の教育目標の達成に役立つ。このように子どもが英語を学ぶことには多くの利点がある。早期英語教育は母語に悪影響を与えるのではないかという心配もあるが、これは母語の刺激が十分にされないと起こるのである。母語の刺激も十分にし、第二言語の刺激も与えれば、子どもは両方の言語を習得できる。

Chapter III

 この章では、子どもの英語学習に適した教材と親が行うべき取り組みについて考察する。3歳までで、子どもは約10950時間という長期間に日本語漬けになることで日本語を習得する。帰国子女でも週に1回程度の英会話教室に行くだけでは、英語力の保持は難しい。つまり英語を習得し、維持するためにはつねに英語に触れられる環境を整える必要がある。また、子どもは周りの人とつながりたがったり、親の愛情を受け入れたり、周りから学ぶという性質がある。これらより、家庭で親が英語を教えるのが適格である。家庭で手に取りやすく適した教材として、日常でよく使う単語やフレーズが学べるものやテレビ番組やウェブサイトなど、費用があまりかからず身近にあるものや、日本作品の英訳版ではなく海外作品のものが適している。親が子どもの英語のために行うべき取り組みとしては、子どものコミュニケーション力を高めることである。せっかく英語のスピーキング能力があっても、コミュニケーション能力が低いと英語力を活かしにくい。また親は、一緒に英語を楽しむことも大切である。英語を強制的に学習させたり、ミスを全部訂正したりすると子どもの意欲を下げ、英語にマイナスイメージを持たせてしまう。親の働きかけが子どもの英語力の伸びに大きく関わる。

Conclusion

 英語能力が役立つ場面が近年増えており、今後も増えていくだろう。子どもの英語学習を始めるなら、6歳までに始めることが望ましいと考える。英語を学習させる際には、家庭で英語に触れやすい環境を整えることが適している。「英語=勉強」として強制的に教え込むのではなく、「英語=遊びのひとつ」と子どもが感じられるように興味を示した教材を使い、親がともに楽しんで学習をすすめるべきである。