A Study of English Education in Finnish Elementary School
(フィンランドの小学校における英語教育の研究)

65期 AI 類 M. H.

Introduction

 今、日本の小学校英語教育が大きく変わろうとしている。現在第5学年及び第6学年の児童が「外国語活動」として受けている英語の授業が、2020年には教科として導入されることが決まった。さらに「外国語活動」を学ぶのは第3学年からに引き下げられることになる。しかし現場では教員の英語力不足や指導力不足などの懸念から、効果的な英語指導を行えるのかという不安の声が多くあがっている。
 この論文で筆者はフィンランドの英語教育に注目した。フィンランドは、その高い英語力が世界的に評価されており、また教育先進国として各国からの注目を集めている北欧の小国である。ここではフィンランドにおける早期英語教育の実態を調査し、日本の小学校で活用できる効果的な英語の指導方法を提案する。

Chapter I A System of Finnish School

 第1章ではフィンランドの教育制度、特に小学校英語教育の仕組みについて詳しく考察する。フィンランドでは国内のほぼすべての学校が公立で、そこでは小中一貫教育が行われている。小学3年生から第1外国語の学習が義務化されており、小学5年生から第2外国語の学習を始める。多くの子どもたちは第1外国語として英語を選択する。フィンランドと日本の学校における英語授業時間数の比較では、両国の差が顕著にあらわれた。第5学年から外国語として英語を学ぶ日本の小学生は卒業までの2年間で計53時間の英語の授業を受けることになる。一方フィンランドの子どもたちが小学3年生からの4年間で学ぶ英語の時間数は計228時間にのぼる。ここから、フィンランドの小学校ではいかに早期英語教育が盛んに行われているかが分かった。

Chapter II What I Observed in Finnish School

 この章では筆者のフィンランドの小中学校でのインターンシップの経験をもとに、フィンランドの英語教育の実態について述べる。ここではフィンランドの学校の特徴を以下の

  1. 教育の無償提供
  2. 効果的なICT機器の活用
  3. 充実した英語教材
  4. 英語とスウェーデン語の学習に対するモチベーションの差
  5. slow learnersへの配慮
という5つに分けてそれぞれについて詳しく見ていく。

Chapter III The Teaching Procedure of the Class Taught by Using Finnish Method

 第3章では前章までで見てきたフィンランドの英語教育実践を参考にしながら、それを日本の小学校でより実践的に使えるような授業案を提案する。フィンランドでは英語に限らず様々な科目の授業において教科横断的な授業実践がなされている。ここでは音楽教材"Month of the Year"を使用することで、身体的な動きを使いながら知識の定着をはかり、教科横断的な授業実践を実現する。またフィンランドの教育現場視察から、授業内でのクラスメイトとのコミュニケーション活動の多さは日本の学校教育の特徴であることに気づいた。そこで、この授業案では英語を使って自分自身やクラスメイトについて知るインタビュービンゴを導入する。この活動を通して児童が自分自身について英語で表現する機会の確保も行う。ここでは反復練習で知識の定着をはかる。

Conclusion

 フィンランドでは日本の学校と比べて早期英語教育が手厚く提供されていることがわかった。さらに英語に限らず様々な科目で教科横断的な授業が積極的に行われており、英語が苦手な子どもでも他教科の知識を使いながら楽しく英語の学習に臨める授業基盤が確立されていた。ICT機器は各教室で効果的に使用されているが設備自体は日本の学校のものと大きな差はないように思えた。日本の学校におけるICTの効果的な使用はフィンランドの学校から学べる点が数多くあるのではないかと考える。フィンランドと日本の学校で提供されている英語教育には多くの違いがみられたが、同時にフィンランド人の英語力の高さの秘密には学校での教育だけではなく様々な文化的・社会的要因が関係しているということも分かった。