The Practical Use of Language Experience Approach for English Teaching at Elementary Schools
(小学校英語教育におけるLEA[言語経験アプローチ法]の実用的な活用について)

65期 AI 類 Y. N.

Chapter I The Background and Current Situation of the Introduction of Foreign Language Activities at Elementary Schools

 外国語活動必修化までの第一歩の取り組みとして、文部科学省は1992年に大阪市立の二つの小学校を研究開発学校として設置を試みた。そして、1998年に告示された学習指導要領の中で新設された「総合的な学習の時間」の中で、国際理解教育の一環として全ての小学校で英語活動に取り組むようになった。しかし、総合的な学習の時間の目標や内容は、各学校の実態に応じて決められていたため、各学校で扱う内容にばらつきがあった。そのような側面から、義務教育における機会均等を目指し、新たに「外国語活動」として英語教育をすることが決められた。
 平成20年の小学校学習指導要領外国語の目標は、「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。」であるが、このことから小学校外国語活動が「体験的に」ということに重視していることが中学校や高校の目標と比較して分かる。
 外国語活動の成果や問題も挙げられており、その一例を紹介する。小学校5・6年児童約2万人、中学校1・2学生徒約2万人、小学校管理職・学級担任、中学校管理職・外国語科担当教員それぞれ約3千人を対象に調査した、「平成26年度小学校外国語活動実施状況調査」によると、外国語活動に肯定的な児童が多い。(下記グラフ参照)

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 上記の表はほんの一例にすぎないが、このような肯定的な意見が多いということは、外国語活動は成果があると言える。一方で、樋口忠彦氏が以下のような外国語活動の問題点も挙げている。

  1. 中学校段階で英語の学力差が見られ、英語嫌いの生徒も増えている。
  2. 小学校の担任、特に高学年の担任は多忙なこともあり、外国語活動の教材研究、授業準備、TTの場合はパートナーとの打ち合わせ時間の確保が必要である。
  3. 小学校担任の多くは、英語力や英語の授業力に不安を感じている。ALT、日本人外部講師、中学校英語科教員は外国語活動の理念の理解や児童の理解が不十分な場合が多い。また、各教育委員会によるこれらの外国語活動の指導者に対する研修計画が貧弱な場合が多い。
 このような問題も挙げられているが、学級担任が外国語活動を指導するという基本的な方針に従っていくためには、学校教員一人ひとりの育成が必要である。さらに、このような問題を認識し、改善に努めていくことも必要である。

Chapter II What is Language Experience Approach?

 LEA(Language Experience Approach)とは、絵本等の文字が学習者の日常言語の経験に関連しているならば、彼らはそれらの文字を読むことができる、という考えに基づいた教育法である。英語教育という側面から考えれば、英語が視覚的にあふれる日常生活において、LEAは適していると考えられる。またLEAに基づいた学校での学習は、日常生活の中に学びを見出しているため、もう一度日常生活に返すことができる。つまりLEAとは、日常生活での経験、授業での学習、そして学んだことを日常生活へ活かす、という一連の流れをたどる日常生活の中から学びを創造する教育法である。
 LEAを外国語活動に活用するために、「ヨーロッパ共通参照枠」と呼ばれる、外国語を習得するに当たって学習者を分類した枠組みを参照する。その分類の中でも、たいていの児童は最も初期の段階に属すると考えられる。その段階の特徴は、「具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることもできる。 自分や他人を紹介することができ、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、持ち物などの個人的 情報について、質問をしたり、答えたりできる。 もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。」と、分類されており、児童は日常的表現などの生活に基づいた物事を理解できるとある。そのため、LEAとヨーロッパ共通参照枠の両側面から、児童には日常生活に基づいた学習が適している。

Chapter III The Use of Language Experience Approach for Foreign Language Activities at Elementary Schools

 LEAを学校の中に取り入れていくために、授業内と授業外の具体例について述べていく。LEAは絵本等の文字が学習者の日常言語の経験に関連している必要があるため、英語を経験できる空間へ変えることで、児童がより自然に英語を学習することができる。授業外の具体例として、教室の空いている壁などを活用し、写真をその写真を示す英単語を並べて貼っておく、また、予定黒板などの日本語の文字の横に、同じ意味の英単語を並べておく、という活用方法がある。日常生活の中に英単語を配置しておくことで、視覚的に英語を経験できるという仕組みになっている。他には、朝の会や帰りの会、学級活動などの時間を活用し、外国の本を読み聞かせをする、外国語の歌を歌うという活動例がある。LEAに基づいたこの活動の注意点としては、読み聞かせたり、歌ったりすると同時に文字を示すことが重要であることである。授業内の活動例としては、新しい単語を学習するときに、フラッシュカードなどで単に文字だけ示すのではなく、実物を持ってきたり、写真を示したりすることでより体験的に学習することができる。さらに、視覚以外の五感を活用することで、より体験的に学習することができる。つまり、授業内の学習であっても、より体験的に学習することが、LEAの側面から考えても、重要である。

Conclusion

 この研究を通じて、外国語活動が多くの取り組みの結果、体験を重視した学習を目指していることが分かった。さらに、LEAやヨーロッパ共通参照枠などの側面から、体験的な学習が小学校の英語教育に適していると言うことができる。そして、日常生活における空間や時間の有効活用が、児童の学びの機会を生み出すことができるだけでなく、五感を刺激する活動は、体験を重視する外国語活動には適している。