Teachng English with Digital Textbooks
(デジタル教科書を用いた英語の指導)

64期 AII 類 K. K.

Introduction

 近年、政府が進める「フューチャースクール推進事業」によって、デジタル教科書が一般的なものになろうとしており、実際の授業においても様々な役割を獲得している。しかし、デジタル教科書は万能なものではなく、授業内で活用するためにはその性格や長所、短所を教員が理解しておかなければならないだろう。本卒業論文では、デジタル教科書の長所や短所を明らかにした後に、その特徴を実際の英語教育のどの場面にどのように組み込むことができるのか、どの場面には不向きであるのかを論じる。また、本卒論における"Digital textbooks"(デジタル教科書)とは、タブレット形式のものとプロジェクター形式のものとしている。

Chapter I Merits and Demerits of Using Digital Textbooks

 デジタル教科書を効果的に活用するためには、まずは教員自身がその特徴を理解しておくことが不可欠である。Chapter 1 では、その長所と短所を挙げ、それぞれについて考察する。
 長所としては、「学びの履歴の蓄積」、「図形や地図などの操作性」、「視力への配慮」、「健康・安全面」(重いバッグからの解放)、「紙資源の節約」、「子どもたちの情報社会への適応」の6つが挙げられる。これらの特徴によって、デジタル教科書は授業の質を大幅に向上させたり、身体的に支援が必要な子どもたちの助けになるだろう。過去の自分の学び方と現在を比較出来たり、図形などの直感的な操作によって子どもたちの学びは深まり、時にはモチベーションの向上に大きく貢献すると考える。
 しかしながら、先述のようにデジタル教科書は万能ではなく、教員が使い方を誤ってしまうと、子どもたちの学びの質を低下させてしまうような短所も持ち合わせている。短所として、「費用の増大」、「教員側のICTへの不慣れ」、「子どもたちの身体的疲労」(目・肩・腰)、「画面の面積による限界」の4つが挙げられるだろう。特に画面の面積については重要である。机の上に複数の資料集や教科書、ノートを広げて学習した経験は多くの人が持っていると思うが、すべてをデジタルで済ませようと思うと限界があり、一覧性が脅かされる。このような短所を教員が理解したうえで、デジタル教科書は授業内に導入されるべきである。

Chapter II The Present Situation of Using Digital Textbooks in Mie

 現在三重県内では、松阪市がデジタル教科書をはじめとするICT機器の活用に積極的だ。ICT機器が実際の授業内でどのように活用されているのかを知るために、松阪市内のとある中学校の英語の授業を二度見学させていただき、ICT機器の可能性を大いに感じることができた。
 一日目(9月25日・5時間目)は三年生の英語の授業を見させて頂いた。そこでは、一人一台のタブレット端末を用いた授業が行われており、子どもたちはタブレット端末を使って、お互いの英語でのやりとりを録画することによって、お互いのスピーキングスキルを評価しあっていた。会話をするときの表情や身振り手ぶり、感情の込め方などを録画し、過去の自分の映像と比べて進歩を実感したり、表情豊かに会話をする生徒の映像を正面のスクリーンに映して全員で評価するという光景が見られ、モチベーション向上にも貢献しているようであった。
 二日目(11月25日・5時間目)でも、タブレット端末は録画機器として活用されており、子どものモチベーション向上や評価のために用いられていた。両日の授業も、タブレット端末はデジタル教科書としては用いられてはいないものの、これからのタブレット端末の授業における展開の可能性を感じることができた。デジタル機器の長所や短所をこの段階でしっかりと理解しておくこともできるだろう。二度の見学によって、デジタル教科書が実際の英語の授業内で活躍する日はそう遠くはないと思わされた。

Chapter III How Should Teachers Use Digital Textbooks in English Classes?

 Chapter 1 で述べた特色やChapter 2での見学体験をもとに、実際の英語の授業のどの場面で、どのように活用するべきかを考察する。デジタル機器が活躍する時代だからと言って闇雲にすべてをデジタル化する必要はない。デジタル教科書を活用することで学びの質が向上すると思われる所に使う事が望ましい。うまく使えば、発音アクセントを聴覚だけでなく視覚で理解出来たり、自律学習が促進されるなど、学習の質が大きく向上する。しかし、恒常的に掲示しておくもの(単語や授業の目標など)はアナログの物を使うべきだろう。教員は常に「どこでデジタル化すれば授業の質が向上するか」を考えなければならない。

Conclusion

 デジタル化がますます広がる教育界だが、すべてをデジタル化することが目的ではなく、教育の質を上げることが目的である。そのために教員はデジタル教科書の特性を十分理解し、その特性をどこに、どのように使えるのかを考えて授業を行わなければならない。