Teaching English in Elementary Schools in Finland
(フィンランドにおける小学校英語教育)

64期 AI 類 Y. A.

Introduction

 グローバル化が進み、英語の需要が高まってきている。日本では、2011年に小学校5・6学年で外国語活動が始まった。2020年の東京オリンピックに向けて、近い将来小学校5年生から英語が教科化されるかもしれない。現在の日本の英語教育には改善の余地がある。一方フィンランドは教育水準が高く、注目を集めている。フィンランドの学校教育、特に英語教育に焦点を当て、将来の日本の小学校の英語教育について考える。

Chapter I Why is Finland at the Top of Academic Abilities in the World?

 OECDが行っているPISAの結果からも、フィンランドは世界でも学力が上位を占めていることが分かる。その理由は何か。
1)【言語習得に対する意識】
フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語であり、90%以上の人々がフィンランド語を使用している。しかし、周りの国々と交流を図るにはフィンランド語だけでは不十分であり、世界で生き残るためにも他の言語、英語が必要だというフィンランドの人々は考えている。
2)【社会福祉の充実】
子どもを持つどんな家庭でも産休や育児休暇を受けられるのはもちろん、公立・私立に関わらず小学校から大学まで学費が無償であるため、経済的な不安なく子どもたちは教育を受けることが出来る。
3)【学校教育】
ヨーロッパの他の国々と比較すると、義務教育は7歳からと少し遅い。就学前の時期は「遊び」が重要視されており、それは就学後にたくさんの物事を学ぶための準備期間とされている。また、フィンランドでは学校教育は生涯学習の一環として捉えられていて、小学校段階から自律した学習者の育成を目標としている。

Chapter II When is Appropriate for Students to Start to Learn English?

 ある現象が発達の特定の時期に起こる。これを臨界期(critical period)言う。言語習得における臨界期を、人々が言語を習得するのに適切な年齢の境界とし、音声、統語・形態素、語彙の3つの分野に分けて調べた。第二言語環境下では、音声の臨界期はおよそ5歳、統語・形態素は12歳、語彙は9歳とされている。臨界期は分野ごとに異なることが分かる。音声の臨界期が最も早く、また、統語・形態素の臨界期が遅いのは、その習得が語彙の蓄積によってなされるからであると考える研究者もいる。しかし、それぞれの研究者や研究の量によって結果が異なるため、厳密に臨界期を判断することは難しい。

Chapter III Teaching English in Elementary Schools in Finland and Japan

 フィンランドでは、1970年代から小学校英語教育が行われている。小学校3年生から第1外国語、5年生から第2外国語の学習が開始し、ほとんどの子どもが第1外国語に英語を選択する。また日本と比較すると英語の授業数は多く、教師が英語で授業を進めたり、家庭でもテレビ放送が英語の字幕がついていたり、日常的にフィンランドの子どもたちは英語に触れる機会が多い。日本の子どもたちにも日常的に英語に触れる機会を提供することは大切だが、学校外でも英語に触れることが出来るかどうかはそれぞれの家庭の経済状況が問題となり、社会福祉の充実が求められる。フィンランドの教師は義務教育における最終目標は自分自身で生きていく力をつけることであると考え、人生という観点を子どもたちにもたせている。そのため、子どもたち自身も英語を習得することは将来国際社会を生き抜くための第一歩であると認識している。
 フィンランドの教育にはきわめて特別な方法があるわけではない。日本との違いは、教育の目的の何を重視するのか、子どもたちをどの方向に導くのかという計画や、社会的状況、理想の社会のイメージが明確であるかどうかである。日本人には他の言語を使うことが出来ないことで、世界で生き残ることができないという危機感が薄い。現在の日本の英語教育を改善するには、子どもたちに英語の必要性を認識させることが重要である。