The Cooperation between ALTs and HRTs in Teaching English at Elementary School
(小学校での英語教育におけるALTと担任の協力関係について)

63期 AI 類 H. N.

Introduction

 現在において第5学年、第6学年の子どもたちは「外国語活動」という名の時間に週に1時間英語を勉強している。さらに2020年度からは小学校において英語が教科として子どもたちに教えられるようになっており、小学校での英語教育が本格的に始まろうとしている。すでにいくつかの都道府県は小学校教員の採用で英語推進を目的とした教員枠を設けており、すでに準備は少しずつ進められているように思われる。一般に海外へ渡航し、語学を学ぶ人の数も年々増加傾向にあり、英語へ対する人々の関心も高まってきているように捉えることができる。
 小学校の担任の先生は英語の知識の有無を問わず、教えなければならない立場に追い込まれている。そのために、小学校にはALTという外国人の講師がおかれているのである。しかし、その2者の間には数えきれないほどの深刻な問題が起こっているのが現状である。私はバンクーバーへ語学留学をした際に、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)を学び、小学生に英語をどのように教えていくべきなのかを勉強した。その知識を生かし、このALTと担任の先生の間にある問題を解決する糸口を発見し、子どもたちにより良い英語の授業を提供するための、より良い協力関係を築いていくためにはどうすればいいのかということを明らかにしていく。

Chapter I 

 1章では、主に英語を教えるときにALTと担任の間で起こる問題について考察した。その問題を「授業環境について」「ALT自身について」「担任自身について」の3つに分類した。「業環境について」の問題が一番多かったが、この問題は国の制度や、教育委員会など大きな団体に関係してくる問題であり、個人的に解決することは簡単ではない。そこで、ALTと担任の2者間にある問題に着目し、ある推測を得た。それが下の図である。

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 左の図が現在の状態を表しており、右の図は理想の状態を表している。上空の雲が"授業環境について"の問題を示し、そこから雨となって2者間に問題を生み出す。しかし両者はそれぞれの独自の解決方法しか持っておらず、共有することが少ないために、協力関係をうまく築くことができないでいる。そこで解決方法を共有し、両者が1つの大きな傘を持てた時、協力関係を築くことができるのではないかと考える。

Chapter II

 2章では、1章で述べた推測をもとに、ALTと担任に対する独自のアンケート調査を実施した。結果として、ALTも担任自身も担任の英語力の無さを感じており、より必要性を感じていた。さらに担任にはALTと話す時間がないくらい、すでに数多くの仕事が割り当てわれており、その英語力の無さをカバーできるほどの時間もないに等しい。英語力の無さを実感してはいるのが、どうにもできず、ジレンマを抱えている担任の姿がアンケート結果から浮かんできた。また、担任はALTに何か話したり、相談したりすることにためらいを抱えていることも明らかになった。
 それに加えて、ALTと担任の協力関係を築くための3ステップをアンケート調査の結果から提案した。それが下の図である。

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最初のステップはまず、人間関係を築くことである。あいさつをしたり、事務的な連絡をしたりすることにあたる。私がここで述べたいことは、先ほど述べたジレンマや担任のALTに対するコミュニケーションをとることのためらいがこのステップの妨げとなっているのではないかということである。

Chapter III

 3章では、ALTと担任の間に協力関係を築くために何が必要なのか、2章で述べた3ステップに触れながら、明らかにしていく。2章のアンケート調査の結果から「担任の英語力の無さ」と「ALTとのコミュニケーションの少なさ」がALTと担任との間で深刻な問題となっていることがわかった。前者については、年々より良くなっていくのではないかと考える。多くの教員養成機関でも英語の授業が開始され、教育委員会でも英語の研修も増えてきているからである。問題なのは後者である。そこで2章で述べた3ステップについて思い出してほしい。一番初めのステップとして人間関係を築くことであったが、その人間関係は両者のコミュニケーションに基づくということが明らかになった。そのため、その3ステップにお互いにコミュニケーションを取り合うことを加え、4ステップとした。それが下の図である。

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学校現場において、何もかも知り尽くしている担任がALTのコミュニケーターとしていることが大切であると考える。担任が自分の持つ役割を果たして初めて、ALTも自分の全力を尽くそうと思うのではないかと考える。
 さらに、コミュニケーションをよりうまくとるための具体的な策の1つとして、授業後のワークシートを提案する。担任は普段から挨拶など、簡単でシンプルな行動をALTに対してするべきであり、そしてそのワークシートを通して、授業の振り返りや次時の授業について話すきっかけを作ることを目指すべきだと思われる。

Conclusion

 簡潔に言えば、担任はたとえ英語に関する知識が十分でなくても、英語に対する興味は失ってはならないのではないかと思われる。ある小学校の英語のクラスを観察させていただいたときに、担任の英語に対する興味の度合いによって、子どもたちの英語に対する態度も明らかに違いが出ていた。今まで述べてきたように、担任が英語に興味を持つことで生まれるメリットは多くあり、それは子どもたちにとっても良い影響を与えると言っていいだろう。私が提案した4ステップをすべて踏めたとき、ALTと担任の間には協力関係が築けているだろうと考えるし、また担任はその過程において、自分自身の役割を理解することが必要不可欠であると考える。