Effective Methods of Foreign Language Activities at Elementary School
(小学校における外国語活動の効果的な指導法について)

63期 AII 類 S. H.

Introduction

 近年、日本では、小学校に通う前の子どもを英会話教室へ通わせたりする親が増えている。英語という言語が事実上の世界共通言語として機能している現在、英語を使うことができる人が今後の国際社会を生き抜く上で重宝されるグローバルな人材であると考える人も多いだろう。我が子も、今後の社会を生き抜くために英語を使える人になって欲しいという願いも込めて、このように早期英語教育に力を注ぐ親が増えてきているのは事実である。また、多くの言語学者が主張している、第二言語習得の臨界期というものに過剰に意識してしまっている場合も多い。それと同時に、幼い頃から英語に触れさせることでバイリンガルになるという迷信を信じている場合もあるだろう。このような、親たちの心配の背後には、グローバリゼーションというものが伺える。そして今、教育界でもグローバリゼーションの波が押し寄せていて、英語教育に力を入れる傾向が見られる。こうした影響もあってか、文部科学省は、小学校の5・6学年を対象に外国語活動を必修化したのだが、現在の外国語活動では意味をなさないという反対意見も多くある。しかし、指導法によっては、外国語活動を効果的なものにすることもできるはずであり、この論文では、効果的な外国語活動の指導法について考えていく。

Chapter I The Current Situation

 この章では、文部科学省が行ったアンケートの結果をもとに、小学校外国語活動の現状について考察する。アンケートの結果では、外国語活動での簡単な対話練習、そして発音練習が中学校での英語授業に役立ったと答える子どもが多かった。そして、教師側も、外国語活動を受けてきた生徒たちは以前に比べ、リスニング力・スピーキング力が向上していると、過半数の教師たちが感じているという結果が得られ、小学校への外国語活動の導入は成果が見られたと言える。
 一方で、課題も見えてきた。外国語活動が導入されることとなった2011年を堺に、外国語活動を指導する指導者の割合が、外国人教師よりもクラス担任の方が上回ってしまったということである。そして、そのクラス担任の9割が英語の指導資格を持っていないということも分かった。つまり、児童たちは外国語活動を、外国語に不慣れな教師から指導されていることの方が多いということである。

Chapter II Pros and Cons

 この章では、Chapter 1で述べた、外国語活動の現状を踏まえながら、外国語活動に対する賛否に関して考察していく。賛成意見としては、臨界期にあたるのが小学校の段階であるということや、脳科学的な観点や心理的な視点からものが挙げられる。脳科学というのは、中学に入る前までの児童は聴覚記憶が優れているという実験結果や言語の聞き分け能力が年齢を重ねるにつれて衰えていくというデータなどが参考として挙げられている。反対意見としては、母語のアイデンティティーに関することと、指導者(力)不足が挙げられる。小学校という段階で第二言語を習得するということが母語に悪影響を及ぼすということが言えるだけでなく、未完全な母語のうえに第二言語の知識を積み上げても、両方とも壊れてしまう危険性があるということである。そして、指導者(力)不足に関してはChapter 1でも述べたように、外国人教師が足りていなくて、外国人教師と協力して行う授業は2回に1度という頻度であり、この頻度で児童たちに「外国語に慣れ親しませる」ことはできていると言えるのだろうかという意見である。

Chapter III Suggestions for Better Foreign Language Activities

 この章では、外国語活動の効果的な指導法について提案する。まず、外国語活動を指導するにあたって重要なことは、外国語を学習するのに適した環境を整えることと、外国語を学習する動機付けを与えることである。そのうえで、具体的な指導法を考えていかなければならない。外国語活動で重視されている活動は、一般的には発音と対話である。そこで、発音に関しては和製英語であるカタカナと英語の違いを認識させることから始め、その後、フォニックス指導法を用いて指導していく。対話の活動に関しては全て外国人教師と協力し、クラス担任が担う活動は、異文化理解と文法に関する内容で、それも外国人学校や中学校と連携してICTを活用した授業を行ったりしながら進めていくことが望ましい。また、文法指導を外国語活動で行う必要はないという意見も多くあるが、外国語の文法の理解をはかるのではなく、外国語と日本語とでは文法構造が異なるという違いを認識させておくことが、今後の英語教育に役立ってくるのではないかと考える。

Conclusion

 外国語活動をよりよくするためには、外国語を学習するのに適した環境を整えることから始め、中学校英語への基盤となるものを作っていくことが求められる。基盤となるものというのは、正確な発音や学習に対する意欲、日本語と文法が異なるという認識などといったものがある。これらの基盤を作ることができるような努力が必要である。しかし、現在の日本では、これらを十分に指導することのできる指導力が足りていない。外国語活動指導法に関する研修会なども開かれているが、多忙な職ということもあり、参加できていない教師がいることも事実である。よって、教員が研修会に参加することができるように、学校として支援を進めていくことも求められている。そして、これからも外国語活動に対する反対意見は出てくるであろうが、実際に導入された現在、それを批判するのではなく、その改善すべき点を改めてより良いものに変えていく努力をしていくようになる必要があると感じる。