An Effective Introduction of English Letters into Foreign Language Activities ― A Trial
(外国語活動への効果的な文字導入の試み)

60期 AII 類 M. H.

Introduction

2011年度から小学校で外国語活動が実施になった。その目標はコミュニケーション能力の素地を養うことに重きが置かれている。子どもたちの負担を考慮しつつ、活動は音声面を重視し、原則外国語活動段階では文字指導は行わないように学習指導要領に記載されている。しかし、私がスクールサポーターや学童保育等で接してきた子どもたちの声からは、「英語の文字を習ってみたい。」というような文字学習に対する積極的な意見が聞こえてくる。英語のできない日本人が問題となっている現在で、早期教育の観点からも小学校段階からの英語学習は重要な意味を持つと私は考える。外国語活動における文字指導は、現行の学習指導要領の内容を超えるものではあるが、より良い外国語活動のあり方を文字指導の観点から考察する。そして、効果的に文字を導入することにより、子どもたちの学習意欲の向上にもつなげたい。

Chapter I

この章では、現行の学習指導要領に触れ、なぜ文字指導が認められなかったのかについて言及する。学習指導要領では、アルファベットなどの文字や単語の取扱いは、音声によるコミュニケーションを補助するものとして用いるように書かれており、教師はアルファベットなどの文字指導が子どもたちの負担とならないよう配慮するよう求められている。小学校段階では、原則として文字指導は行わないとされつつも、補助的に用いることは良いと記載されている学習指導要領の文言にはあいまいさを感じる。英語教育に精通した知識人たちの中で、小学校段階では、音声と文字とを切り離し、音声を中心にした指導を心がけることが大切であるという意見が多く見られたため、このような運びになった訳である。中学生が英語学習で抵抗を示す文字を、小学校で新しい言葉を学習利用とする子どもに、新しい音声と文字をほぼ同時に導入することは大きな抵抗を生み出し、英語嫌いの子どもにしてしまうという懸念の声は納得できる。しかし、例えば音声と文字を結び付けて学習するフォニックスのように、効果的に文字指導を行えば、中学校からの文字学習や本格的な英語学習との円滑な連携ができ、子どもたちが抵抗なく、英語に慣れ親しむことができるのではないかと考える。また、英語を専門的に学んでいない人が多い小学校教員が、外国語活動を担当しなければならないことは教える側としても負担や不安の声があり、それらが早期英語教育としての小学校英語に歯止めをかけていることも否定できない。国際化の進む社会において、英語のできる日本人育成のために、小学校教員への外国語活動のフォローアップ等の研修制度の充実を訴える。

Chapter II

この章では、Chapter 1で言及した文字指導反対派の意見や現在の外国語活動の実際の分析から考えた私の文字指導に対する肯定的な意見を立証するような、外国語活動への文字導入の利点や実践的な取り組みについて取り上げる。身の周りにアルファベットのような英語の文字が溢れている現代社会では、子どもたちは自然に覚えてしまっていることも多く、文字が与える視覚的な情報は子どもたちの興味・関心を誘う。それゆえ、子どもたちの英語を知りたい、学びたいという学習意欲にもつながっている。また、ピアジェの認知発達理論からも小学校高学年の頃より、子どもの知的関心の範囲が大幅に広がり、知的能力の獲得が進むことが指摘されている。このような肯定的な意見を基に、小中連携、ローマ字とアルファベット、フォニックスを中心に据え、外国語活動への文字導入の実践を考察する。ローマ字とアルファベット、発音と綴りの関係は、中学生が読み書き学習で困難を示す原因である。それらを防ぐために、小学校段階からの積極的な導入と有機的な連携が重要であると述べる。既知と未知の知識を上手く関連づけた実践を紹介する。

Chapter III

この章では、Chapter 1とChapter 2を基に、具体的な授業案や活動例について取り上げる。一つ目は、ローマ字とアルファベットとの連携を意識したカリキュラムで、あらかじめ英語の音声にABCの歌等で慣れ親しませ、同時に英語の文字を形として捉えさせることを意図して、アルファベットの書かれたマットやカード等を身の周りに置き、たくさんのインプットを与える。その後、アルファベットを組み合わせて日本語の音を表すローマ字について学習する。同じ英語の文字で出来ているが、ローマ字は英語を借用した日本語のようなもので、英語とローマ字は違うことを理解させなければならない。二つ目は、外国語活動にフォニックスを導入するカリキュラムである。フォニックスは、英語圏の子どもたちの文字学習のためのものだが、英語を学ぶ日本の子どもたちにも効果的であると近年その効用が指摘されている。フォニックスルールを覚えてしまえば、発音と綴りの関係をある程度理解することができるだろう。それにより、中学生によく見られる音としては知っているのに書けない英単語の間違いを軽減できると考え、外国語活動へのフォニックス導入を強調する。

Conclusion

この論文で私は、現行の学習指導要領の内容を超えるが、効果的な文字導入はさまざまな利点があると言及し、今後の外国語活動のあり方を考え、より良いカリキュラム・授業改善を試みる。子どもたちや教師の負担を配慮すると、革新的な早期英語教育に踏み出せない現状も見えてきたが、保守的すぎては今まで通りの英語のできない日本人のままである。子どもの発達段階を考慮しつつ、英語好きの子どもたちを育成するために、さまざまな実践を行い、外国語活動の発展を願う。小学校教員となる私もその一端に寄与できるように頑張っていきたい。