How to Teach the Progressive Form with Special Reference to the Verbal Aspect
(動詞の語彙的アスペクトを活用した進行形の指導法)

60期 AII 類 S. I.

Introduction

本研究は、高等学校における進行形の指導について、進行形が示す文法的アスペクトに加え、動詞が示す語彙的アスペクトから分析を行い、従来の学習英文法の枠を超えて新たな指導の枠組みを構築しようとするものである。
 英語の進行形が指す内容は日本語では典型的に「…している」と訳されることが多いが、これが進行形の全ての用法について成り立つわけではない。例えば、"The cat is dying" という英文は「その猫は死んでいる」という完了の意味を示すのではなく、「その猫は死にかけている」という完了へ接近しつつある状況を表す。このような完了への接近を示す進行形は高校生が誤解しやすい部分の1つであると言える。
 進行形がどのような意味として解釈できるかは共起する動詞の持つ時間的性質である「語彙的アスペクト」によって決まる。本研究では、動詞の持つ語彙的アスペクトを元にした動詞の分類法を考案し、それを活用した進行形の指導方法を構築することにする。

Chapter I Survey of Reference Grammar Books in Japan

Chapter 1では、Declerck (1991) の研究をもとに進行形の各用法について考察し、高校生が用いる参考書の抱える問題点を指摘する。
 進行形には、主に(1)進行中の場面を表す用法、(2)一時的な習慣を表す用法、(3)繰り返される動作を表す用法、(4)非有界な的な場面を表す用法の4つが認められる。一般的な参考書は、動詞の語彙的アスペクトを考慮せず、各用法の日本語訳と例文を列挙するにとどまっている。また、「…している」という日本語訳に適さない進行形の英文を「例外」として扱っていて、統一的な説明ができていないなどの問題点を抱えている。

Chapter II Overview of Previous Studies

Chapter 2では、進行形と語彙的アスペクトとの関わりから英語動詞の分類を行ったAndo (1983)とLeech (19872)の研究を概観する。Andoは、時制と相の指導に関連して、動詞を「状態的動詞」、「瞬時的動詞」、「非瞬時的動詞」、「非完結的動詞」の4つに分類している。一方、Leechは、動詞の語彙的アスペクトによって進行形の意味解釈が変化することを指摘した上で、動作動詞を「瞬時動詞」、「移行動作動詞」、「出来事動詞」、「過程動詞」の4つに、状態動詞を「静的知覚動詞」、「静的認識動詞」、「beやhaveなどの状態動詞」、「体感覚動詞」の4つにそれぞれ分類している。それぞれの分類における特徴を指摘しつつ、それらの抱える問題点について述べる。

Chapter III Investigation of Lexical Aspect

Chapter 3では、Vendler (1957) の動詞分類を取り上げる。Vendlerは、動詞が表す出来事を「過程」、「期間」、「終点」という3つの観点から考察し、動詞を「達成」、「活動」、「到達」、「状態」の4つに分類する。この3つの観点は新しい指導法構築に役立つだろう。また文の要素を変化させることで、ある動詞が複数の範疇に分類されうることも指摘する。

Chapter IV How to Teach the Progressive Form

Chapter 4では、私が進行形指導に用いる新たな動詞分類を示し、進行形指導案を提案する。新たな動詞分類では、高校生が理解しやすい項目を先に並べ、高校生でも動詞がどの範疇に属するのか容易に判断できるようにしている。また、新たな指導法では、まず、Chapter 1で述べた進行形の4つの用法を単純形と比較し、時間的特徴を図示することで確認させた上で、動詞分類表を使ってどの動詞がどの範疇となり、どのような意味解釈となるのか考えさせる。動詞の語彙的アスペクトを意識させることは、完了形など他の文法項目の学習にも役立つと私は考える。

Conclusion

基礎的な英文法指導を徹底的に行うことは英語を習得させる際に非常に大切なことであり、英語学の理論に基づいて正確に指導することが、最も効果が高いと私は考える。教壇に立つ日が来たら、生徒の英語力を向上させることができるようしっかりと英文法指導を行いたい。