Mother Goose Rhymes and Children's Sensibility
(マザーグースと子どもの感性)

65期 AII 類 A. B.

Introduction

 マザーグースとは、イギリスに伝わる伝承童謡のことで、子ども同士または親から子への口頭伝承によって現在まで残っているものである。マザーグースの中に出てくるフレーズやキャラクターは有名なものが多く、今でも新聞(The Economist等)の見出しで使われたり、小説のタイトルとして使われたりしていたりする。マザーグースの唄は簡単な英語で作られているので、子どもたちに馴染みやすく、子どもたちはマザーグースとともに成長していると言える。なぜこれほどまでに子どもたちにマザーグースの唄が愛されるのか、マザーグースのもつ特質と、ピアジェの発達理論、コールバーグの道徳発達理論をもとにこどもの発達理論とマザーグースの唄との関係について考察した。

Chapter I Mother Goose Rhymes and Its Characteristics

 マザーグースの唄の特質について大きく4つに分けて考察した。
1つ目は基礎的な読み書き能力(Basic Literacy)を育てる側面があることである。アルファベット唄("Tom Thumbs Picture Alphabet")や早口ことば唄("Peter Piper Picked a Peck of Pickled Pepper")、積み上げ唄("The House That Jack Built")などがあてはまる。アルファベット唄でアルファベットの順番を覚えたり、早口言葉を言うことで英語の発音を覚えたりする。また積み上げ唄では関係詞節の使い方を覚えることができる。これらの唄を親が子どもたちに読んであげることで、子どもたちは基礎的な能力を身に着けることができると言える。
 2つ目はマザーグースの唄の物語要素についてである。マザーグースの唄は短い歌でも必ず物語が存在するが、その要素は大人向けの一般的な小説とは異なる。マザーグースの唄は、前の部分と関連性なく話が進んでいくので、次に何が起こるか予測できない場合が多いのである。だからこそ、子どもたちは「次に何が起こるかな」とワクワクしながら次々読み進めていく。
 3つ目は、マザーグースの唄の不思議な世界観についてである。空をガチョウに乗って飛んで行ってしまうおばあさんや人間のような行動をする犬や猫、月を跳び越える牛、走るスプーンとフォークなどたくさんの不思議な力を持ったキャラクターが登場し、ユニークな世界を作り上げているのである。これらを読むとき読者は、普通の世界とは違った世界に引き込まれていく。
 4つ目は、社会不適任者(misfits)たちの居所となっている側面があることである。家にあるバケツの中に釣り糸を垂らしてクジラをつろうとする男の子や、金色の卵をだまされて売ってしまう男の子などがこのマザーグースの世界には登場する。普通ならいじめられてしまいそうな子どもでも生き生きとこの世界の中では描かれている。そして、マザーグースの世界の中にはあまり道徳概念がなく、残酷な描写や物語が描かれていることもある。

Chapter II Psychology of Children

 ピアジェの理論から大きく感覚運動期(誕生から2歳)と前操作期(2歳から6歳)にわけてそれぞれの成長段階の特徴について考察した。
 感覚運動期の子どもたちの言語発達としては喃語を話しだす時期であり、周りの大人の言うことを注意深く聞いて音を覚えている段階である。また、因果関係の概念をまだ持っていないことも特徴として挙げられる。前操作期になると、子どもたちは言葉の意味が分かるようになってくる。4歳ごろにはほとんどの文法を理解できるようになる。また、この時期は自己中心的な発達段階であるので、「自分と同じように他のものも考えていて行動している」と考える。このような考え方は、論理的思考の発達の障害物になりうる。しかしながらこの段階を経て子どもたちは様々なことを知り、論理的に理解できるようになっていくのである。
 次に子どもたち(6歳未満)の子どもたちの道徳発達について考える。コールバーグの発達理論から、この時期の子どもたちは無道徳な時期であるということができる。子どもたちは善悪の判断を、周りの大人に怒られるかほめられるかによってのみ判断している。その行動自体がどのような意味があるかということはまだわかっていない段階である。彼らは本能のままに行動していると言える。

Chapter III The Relations between Mother Goose Rhymes and Children's Sensibility

 Chapter 1で述べた4つの特質と、Chapter 2で明らかになった子ども達の発達段階がどのように関連しているかについて考察した。マザーグースの唄は、子どもたちの言語発達段階に適した唄であることや、物語要素が子どもたちの発達段階にあっていること、またマザーグースの世界観について違和感を持つことなくむしろ、好意的にその世界観を受け入れ、楽しむことがわかった。

Conclusion

 このマザーグースの唄は、子どもが様々なことを学んだり、遊びとして楽しんだりするのにとても適したものであるということがわかった。子どもの頃に、親や友達と覚えたり歌ったりした唄を、今度は親になったら、自分の子どもに読み聞かせる。そうして長い間、大人から子どもへそして子ども同士で受け継がれ、今もなお高い人気をもちながら世代から世代へと歌い継がれているのである。