Chivalry in "The Knight's Tale": Courtly Love Tradition
(「騎士の話」における騎士道について: 宮廷風恋愛の伝統)

64期 AII 類 T. S.

Introduction

 「騎士の話」とは、Geoffrey Chaucerによって書かれた、中世英文学の傑作と名高い『カンタベリ物語』に収められている作品の一つである。先行研究によれば、「騎士の話」には題材となった物語がいくつかある。Chaucerは「騎士の話」を書く際にChaucerなりの改変を加えたものと考えた。本論文の目的はそのChaucerの騎士道を明らかにすることである。

Chapter I What is Chivalry?

 騎士道は大きく三種類に分けることができるという。Feudal chivalry, Religious chivalryそしてCourtly loveである。Feudal chivalryとは戦場の中で成長してきたwarriorとしての騎士の徳目を満たす騎士道のことである。この騎士道では主君と封臣における関係が特徴的である。
   Religious chivalryとはFeudal chivalryの徳目にキリスト教的徳目が合わさって成長してきた騎士道である。この騎士道徳目を満たすために行われたのが十字軍遠征であるという。ここには騎士と教会における関係が特徴的である。
 Courtly loveとは中世フランスのトゥルバドゥールたちによって書かれた詩の中に初めて現れた概念である。その本質は既婚女性に対する騎士の奉仕である。騎士は叶うことのない愛を成就させようと自らを高めていこうとする。女性と騎士の間の主従関係が特徴的である。
 これら三つの騎士道には共通点がある。それはどの騎士道にも主従の関係があるということである。騎士道において、主従関係がすべての根底に存在している。

Chapter II Chivalry in "The Knight's Tale"

 Chapter Iで騎士道についての概要を示した。それを利用して、Chapter IIでは「騎士の話」における騎士道観を明らかにする。その際に注目する点は、主人公であるPalamonとArcite、そして二人を取り巻く登場人物たちである。「騎士の話」の大枠は、姫であるEmilyを巡るPalamonとArciteの奉仕の物語である。つまり、Courtly loveに則った物語であると言うことができる。しかし、Courtly love traditionにのみ傾倒しているわけではなく、Feudal chivalryの要素も含んでいることが明らかになった。

Chapter III Comparison of Chaucer's Chivalry with Chivalry in General

 Chapter IIでは「騎士の話」がCourtly love traditionに従っていると考えたが、Courtly loveの騎士道観と「騎士の話」を綿密に比べてみると矛盾点が浮かび上がる。その矛盾点を突き詰めた結果、「騎士の話」は一見するとCourtly loveの話に見えるが、実はFeudal chivalryに重きを置いた物語であるということが明らかになった。「騎士の話」におけるChaucerの騎士道とは、Feudal chivalryに傾倒したものであるということが明らかになった。

Conclusion

 本論文では「騎士の話」を一般的な騎士道と比べることによって、Chaucerの騎士道を明らかにした。しかし、実際に「騎士の話」の題材となったBoccaccioのTeseidaを原本または英語翻訳で読むことができなかったので将来的にはTeseidaと「騎士の話」の分析を行いたいと考えている。