Fool in Shakespeare's King Lear
(シェイクスピア『リア王』における道化)

53期 A 類 Y. K.

Introduction

Chapter 1 道化の特性

「道化」と一口に言ってもサーカス・クラウンや宮廷道化(court jester)、いわゆる白痴(idiot)などその形態は様々であり、定義付けるのは難しい。ここでは道化一般の特徴のうち、『リア王』作品中の道化にも見られる2つの特徴を取り上げる。1つはwise fool(賢い道化)という特徴で、もう1つは逆さま世界の象徴としての道化の特徴である。後者については作品中でその特徴がよく表れている例を挙げて考察する。

Chapter 2 リアと道化

第2章においては、作品中の主要な3場面、王国分割・嵐・模擬裁判を取り上げる。この3場面を通して、リアが自分の愚かさ、つまり表面のみで物事を判断する性急さによって自己のアイデンティティーの崩壊を招き、道化とのやりとりの中でどのようにして狂気と自己認識に至るかを見ていく。

王国分割の場面では、上の娘2人の甘言にだまされ、末娘の言葉にある真実に気づけないリアを分析する。嵐の場面では、リアが娘たちの裏切りとその裏切りにだまされた自分の浅はかさに気づき始め、そしてその怒りの対象が娘たちだけではなく人間を生み出す生殖と自然にまで拡大する様子を分析する。模擬裁判の場面では、リアの怒りと嫌悪がついに狂気に至る様子を分析する。

Conclusion