Allegory in W. Golding's Lord of the Flies
(ゴールディング『蝿の王』における寓意)

52期 II 類 T. K.

Chapter I Introduction

本作品は楽園破綻の物語である。無人島での少年達の生活を通じてそれは描かれている。また本作品は寓話であり、その寓意は、理性の無いところでは悪が支配する、というものである。その寓意は Setting と Characterization によって支えられている。本論文では、それらについて分析する。

Chapter II Setting

本作品は典型的な冒険小説のパロディである。しかし、水や食料の確保、宝探しといったものは作品の中心に据えられていない。焦点は少年達の心の変化に当てられている。それにより、内なる悪によって支配されていく少年達の心が示され、寓意を支えることになる。

Chapter III Characterization

一部の少年は、理性的に行動し、無人島から救助される為の烽火の重要性を訴える。また一部の少年は、狩に耽ることで獣性に目覚めていく。その二種類の少年達が対立することで、理性の重要性と脆さが描かれている。また、その二種類のどちらにも属さない一人の少年が、人間の抱える悪について悟るが、その他の少年達全員に殺されてしまう。それによって、秩序が回復することは無くなり、楽園の崩壊は決定的となる。

Chapter IV Conclusion

理性の無いところで悪が支配する、という寓意は島の崩壊を通じて描かれており、理性の重要性と脆さも同時に示されている。内なる悪に目覚め、獣性に支配されていく少年達と、彼らによって焼き払われる楽園が本作品の寓意を伝えている。

Works Cited:
William Golding. Lord of the Flies. New York: Penguin Putnam, 1954.
坂本 仁 『ゴールディング作品研究』(東京: 鳳書房, 2003.)