Death in the Light: Dylan Thomas's Poetry
(光のなかの死:ディラン・トマスの詩研究)

50期 II 類 T. K.

Chapter I Introduction

ディラン・トマスの詩の根底にある思想について触れる。それは死と生であり、性と死であり、時と死である。

Chapter II Under the threat of Death

トマスが若い頃に書いた"The force that through the green fuse"を主に取り上げる。彼の死に対するある種絶望的な見方、つまり、万物は宇宙の法則に支配されながら、生成と破壊を繰り返すことによって存在しており、トマスもまた宇宙の下においては一個体として自然界の万物と同じ運命をたどらなければならないという思想について論じる。また、トマスの中にある"force"、彼の性的欲求は、生成する能力を持ち得ながら、また同時に彼自身を破壊する脅威の"force"なのである。彼が「愛」と称する「欲求」は生成力と破壊力の両極を持ち合わせ、結局は不毛へと導かれるという絶望感、苛立ちがその詩を覆っている。

Chapter III In the Face of Death

"Do not go gentle into that good night"と"A Refusal to Mourn the Death, by Fire, of a Child in London"を取り上げる。第1章では、若さの中に潜む「死」や「不毛」について論じ、それは宇宙、自然の中に彼自身を組み込むヴィジョンによって1つの世界の完成を見ることができたが、ここでは、トマスの、より「人間」を意識した、つまり、自然から人間を切り離した形での、「人間の死」との直面について述べる。"Do not go gentle…"では、トマスは「死」に対し怒り、抵抗し、悲しむ。そして人間としての「生」のありかたを賛美する。"A Refusal to Mourn…"は、第二次世界大戦のロンドン爆撃によって亡くなったひとりの子どもに向けて、断じてその死を悼むことはしない、と、強くうたう。それは、「死」という営みは人間の繁栄を約束し、そして実際これまで絶え間ない死によって人間の歴史は繰り広げられてきたからである。しかし、そうして死を悼むことを拒絶することによってでさえもトマスの悲しみが癒えることはない。「追悼の拒絶」はさらなるエレジーを生んでしまったからだ。

Chapter IV Innocence and Eternity

トマスのある種過剰なまでに敏感な「死」への自覚は当然のことながら、彼自身の原初の形への関心へと導いた。彼は、幼年時代を賛美する。それは、幼かったトマスは、まだ、「死」へと導く手となる「時」に委ねられていなかったからである。幼いトマスにひそかに時を告げていたのは太陽であり、月であり、星であり、川であった。いつしか彼は「時」に手の中に落ち、そして、彼の楽園は失われる。"Fern Hill"はトマス自身の幼年時代の賛美と「時」に委ねられる「悲しさ」をうたった壮大かつささやかな世界を持つ詩である。

Chapter V Conclusion

これまでの総括をする。詩人トマスが「死」を見つめ詩によって「死」をあらわにすることは、人間の「生」を賛美し、また同時に悲しみ、慈しむことであったのではないかということについて述べる。