A Study of Hardy's Tess of the D'Urbervilles
(トマス・ハーディ『ダーバーヴィル家のテス』研究)

49期 II 類 C. N.

Chapter I Introduction

この作品のあらすじ、作者の生涯などを取り上げる。

Chapter II Tess's Tragedy

物語の最初でテスはアレクという男性に誘惑され捨てられ、後にエンジェルという男性に出会い、求婚される。しかしテスがアレクとの過去を告白した途端、彼女を捨てて逃げる。最後にはテスはエンジェルと結ばれるため、アレクを殺した罪で処刑される。その他にも偶然が次々起こり、それらがテスの悲劇を決定的な方向へ追いやっていく。作者はテスを「清純な女性」と呼んでいる。それは肉体はアレクに犯されても真の恋人エンジェルに純愛を捧げ通したテスをあくまでも清純であると擁護しているのである。

Chapter III Tess and Two Men

テスを悲劇的な最期に追いやったアレクとエンジェルは、アレクは肉欲的でエンジェルはインテリという風に対照的に描かれている。この二人は社会的不正、道徳的偏見、因習を代表するものであり、ハーディーはそれらの犠牲になったテスに代わり、当時の因習的な社会と偽善的な道徳に対して激しい抗議と弾劾を行っている。

Chapter IV Hardy's Immanent Will

ハーディーの思想は世界を動かすものは内在意思("Immanent Will")と呼ばれるものであり、この意思は無意識で盲目であるため、その支配下にある人間の努力も野心もすべて挫折せざるをえない。従って人間の善意も運命には通じようがなく、人間はちょうど操り人形のごとく翻弄され、意外な破局へと駆り立てられる。それは人間の側から見れば、生を否定するペシミズムと受け取られる。彼の運命観はこの作品の根底に流れている。

Chapter V Conclusion

テスの必死の努力も、生命をかけた愛情も、次々と不運な偶然に打ち破られて、あがけばあがくほど運命の網の中にたぐり寄せられていくというこの小説のプロットは、ハーディーの悲観的は宿命論を表している。彼は人生の悲劇的な姿と同時に、圧倒的な運命に敢然と立ち向かう人間の悲壮な姿を描き、そこに人間精神の崇高さをも暗示している。

Reference:
Harold Bloom ed., Thomas Hardy's Tess of the D'Urbervilles (New York: Chelsea House, 1996)
H. C. Duffin, Thomas Hardy: A Study of the Wessex Novels (London: Manchester University Press, 1916)
本多顕彰 『ハーディー』(研究社, 1969)