A Study of Everyday Language Use
- On Hesitations in Speech -
( 日常の言語使用研究:発話におけるためらい )

47期 II 類 T. M.

Introduction

日常生活の中での発話行為は我々が生活してゆくために不可欠な言語使用の一部をなすものである。この論文はその発話行為を構成する要素の一つである hesitation に焦点を当ててゆく。hesitation を扱う上での大きな問題点は発話行為の大部分が自然発生的であることである。また hesitation は言語によっても、個人によっても違いがあるため非常に扱いにくいものであるのかもしれない。よって、この論文の中では、gesture などの発話行為を構成する他の要素とhesitation をからめることによって hesitation がいかなるものであるかを明らかにしてゆきたい。

Chapter I Types of Hesitation

Hesitation と一口に言っても、hesitation にはいくつかの種類がある。第1章ではhesitationにはどのような形態のものが存在するのかを述べる。Hesitation は以下のように5つに分類できるが、これらは絶対的なものではなく、分類基準が違えばまた別の分類もできる。

  1. Pause
    発話のあらゆる箇所に現れる。
    (1) filled pause: well, ah, you know といった有声音を含む pause である。
    (2) unfilled pause: いわゆる会話の間に含まれる silence である。さらに、息継ぎなどの短いものと考え込んでしまっているようなときに見られる長いものとの二つに分類できる。
  2. Word Lengthening
    ある特定の語の音が通常の長さよりも引き伸ばされる現象。The や we といった語の最後の母音が the--, we-- と引き伸ばされることが多い。
  3. Repetition
    文字どおり、音や語、句 (phrase)が繰り返される現象。「どもり」も一種の repetition であると考えられる。
  4. False Start
    主に発話文の文頭に見られる。例えば、Did you と言いかけてやめて、Didn't you で再び発話を始め直したりすることである。
  5. Correction
    文の途中で発話をやめ、別の表現に切り替えたりする現象。発話文の半ばで起こるfalse start のようなもの。

Chapter II Hesitation and Gesture

第2章では hesitation の大きな機能の一つである、「発話者に次に話す言葉を考えるためのplanning time を提供する」という機能をgesture との関連を通して考察してゆく。Gesture は body language であり、目に見える言語である。つまり、視覚的に認識できる発話者の思考の具現化である。具体例の分析から言えることは、gesture は hesitation と同時に起こることもあるが、おもに hesitation の後に見られる。明らかに hesitation は発話者に planning time を提供していることが分かる。

Chapter III Hesitations inIintentional Speech

第3章では自然発生的な発話行為に対し、意図された発話行為を考察する。そして、ここでは物語の中の発話行為(会話文)中に見られる hesitation を見てゆく。取り上げる題材は、L. Fleischer によるRain Man (Penguin Books, 1989) である。ここでも自然発生的な発話行為に見られるのとほぼ同様の hesitation の種類が見られた。大きく違うのは、物語中の登場人物の発話行為には作者の意図が働いていることである。今回見られた hesitation の主な作用は

  1. 登場人物が困ったり、考え込んだりしている場面などでは多く hesitation が使われ、登場人物の心情や場面の様子などを読者によりよく伝える。
  2. 発話文の最後にunfilled pause (silence) などを置くことによって、スムーズに登場人物の心理描写に移行できたりする。

Conclusion

この論文では、hesitation が5つに分類でき、それぞれに特徴があること、自然発生的な場面では hesitation は主に発話者に planning time を与えていること、また意図された状況下(物語の中)では違った機能を持つことが明らかになった。これからの課題としては、hesitation の社会言語的な観点からの考察が行われる必要があるであろう。いろいろな局面での発話のなかでどの hesitation がどれくらい、またどのように使われているのかを見てゆきたい。例えば、みなの前でスピーチをするとき、年上の人物との会話ではどうだろうか。そのような観点からの考察が今後の課題である。

*ちょっとアドバイス*
英語学は言語材料を早くから集めることが大切です。また、手に入れた言語材料は取っておかないで早めに分析しちゃいましょう。分析によって新しい視点を手に入れられるかもしれないし、いろんな発見があると思います。最近はインターネットにかなり役立つ情報があるので暇があれば、探してみるのもいいかな、と思います。