A Study of Participial Constructions
(分詞構文に関する研究)

69期 AII 類 M. K.

Introduction

 分詞構文を卒業論文のテーマに選んだ背景は2つある。それは、今までスタンダードな分詞構文として定着してきた副詞節との機械的な書き換えによる指導法に疑問を持ったことと、堅苦しい書き言葉でしか使われていないというイメージにより、コミュニケーションに重きを置く日本の学校教育であまり重要視されていないことに対する疑問によるものである。これらを踏まえ、特に、副詞節への書き換えが不可能な付帯状況を表す分詞構文についての理解を深めることと、書き換えに頼りすぎない指導法の提案を目的とした。

Chapter I The Characteristics of Participial Constructions

 高等学校で使われている教科書や参考書では、分詞構文が表すことのできる意味(時、理由、原因、譲歩など)を説明するために、分詞構文と接続詞を含む副詞節の文がイコールで結ばれていたり、並列にされていたりする。しかし、実際には、分詞構文の意味は明白に特定できるものではなく、この曖昧さこそが分詞構文の特質なのである。だが、特定の接続詞の意味に当てはめなくとも、分詞構文が同時性を表すことを念頭に置くことで、理解しやすくなる。
 高校生向けの教科書や参考書や自分自身の高校生だった時の経験から、分詞構文の説明と指導は十分であるとは言えず、いくつかの問題点があると考える。それは、専門家も指摘していることだが、分詞構文の本質から外れ、書き換えばかりに偏りすぎていることである。また、分詞構文の中で実際には付帯状況が最も使用頻度が高いにもかかわらず、あまり取りあげられていないなど、現代の英語への配慮がなされていない点がある。

Chapter II Attendant Circumstances

 副詞節への書き換えができないため、最も理解が難しいが、一番多く使われているのが付帯状況である。しかし、高校生向けの文法問題集を調べると、時や理由といった他の意味に比べて掲載の数が少なく、学校教育で軽視されていることが考えられる。では、使用頻度が高い付帯状況の文体価値は何かと検討すると、それは、場面の情景と背景を、受け取り手に創造の余地を持たせつつ、鮮明に生き生きと描く効果があることである。

Chapter III The Usage of Participial Constructions

 この章では、Ant Concというアプリを用いて、分詞句が文末に来る、付帯状況が実際にはどこでどのように使われているのかに関して、分詞になりやすい動詞の種類に着目して調べた。一つ目の使用場面として、新聞(Daily Mirror)を調査したところ、情報を付け加えるためのaddingと発言を付け加えるためのsaying、tellingが多いことが分かった。2つ目の使用場面として科学記事(Nature)を調べると、効果を明らかにするenablingと分析や実験の手段や過程を示すためのusingが多く使われているとわかった。ここまでで、新聞と科学記事はどちらも情報を伝えるためのインフォーマティヴな記事だが、よく使われる動詞の種類には差があると言える。最後に、小説の中でどのように付帯状況が使われているのかを調査するためにハリーポッターからデータを取ると、現在分詞として多く登場していたものは、手を使った動作を表すknocking、holding、clutchingと、表情や顔の動きを表すglancing、smiling、noddingなどのグループ、声と関係があるsaying、tellingの3つのグループに分類することが出来た。新聞、科学記事、小説はどれも決して堅苦しいものではなく、分詞構文は形式的な書き言葉でしか使われていないというイメージは誤りであると言えるのではないだろうか。

Chapter IV The Ways of Teaching in High School

 第4章では、指導法について検討した。学習指導要領では、分詞構文は必ずしも取り扱わなければいけないものとはされていないが、実際には多く使われているもので適切な方法での指導が必要である。そのために、4技能5領域の中で読むことにおいてrecognition level と書くことにおいてproduction levelに目標設定で分けることが望ましい。また、分詞構文と副詞節が全く同じ意味であるという勘違いを引き起こさないために、同時性を意識させてはじめに書き換えができない付帯状況を解説するなどの説明の順序や仕方の工夫、演習の方法を取らなければいけない。

Conclusion

 この論文では、多くの高校生にとって理解が容易とは言えない分詞構文の特質を高校生向けの書籍や文献、新聞、科学記事、小説といった実際の用例からまとめ、高等学校におけるより良い指導法の検討を行った。この卒業論文を通して学んだことを踏まえて、今後は、さらに分詞構文に対する理解を深めると共に、生徒の理解度を挙げるためのオーセンティックな素材を用いた教材研究と授業実践に取り組んでいきたい。