A Study of Gerundive and Infinitival Constructions
(動名詞と不定詞構造の研究用)

69期 AII 類 R. I. .

Introduction

 本論文の目的は、高校の英語教育において動名詞とto不定詞の違いがどのように教えられているかを調査し、その問題点を明らかにした上で本質的な違いを教える方法を考案することである。執筆に至った背景としては、両者の使い分けを無理やり暗記する子どもが多いこと、そして自分自身もまた本質を理解せずに暗記に頼っていたことが挙げられる。
 実際に高校の検定教科書を見ると、「動詞が何を目的語にとるか」という観点から文類がされている。

(1)
a. 名詞のみ ... mind, stop, finish, avoid, admit, deny, consider, put off, etc.
b. to不定詞のみ ... decide, refuse, promise, offer, pretend, fail, expect, etc.
c. 動名詞とto不定詞の両方(似た意味を表す)... love, start/begin, etc.
d. 動名詞とto不定詞の両方(異なる意味を表す)... forget, try, regret, etc.
このリストのみでは、動名詞とto不定詞の違いは見えてこない。よって暗記に頼らざるをえなくなるだろう。一方で、文法参考書には以下のような記述が目立つ。

  動名詞は過去指向、to不定詞は未来指向

多くの動詞に当てはまりそうであるが、多くの生徒が使い方を誤ってしまう動詞がある。

(2) I am considering studying [*to study] abroad next year.

coniderはto不定詞を目的語にとらないことで有名な動詞の一つであるが、多くの高校生がto不定詞を使ってしまう。なぜなら、considerしている内容というのは「まだ起きていないこと、実現していないこと」であるため、未来を表すto不定詞を使うと考えてしまうのである。
 (2)の例から、高校の教科書や参考書は両者の違いを正しく理解するのに説明が不十分だと考える。この問題を解決するため、1章から3章では動名詞とto不定詞の性質について述べた先行研究を調べ、4章で効果的な教え方について述べる。

Chapter I Characteristics of verbs which take gerund as an object

 ここでは先行研究の一部を紹介する。1つ目は「動名詞は行為を単なる一つの出来事として表す」、2つ目は「動名詞は事実や起こると想定されていることを表す」というものである。両者から共通して言えることは、動名詞はある特定の時間の特定の出来事に焦点を当てるのではなく、行為を一つの確立された・想定されたイベントとして表すということである。

Chapter II Characteristics of verbs which take to-infinitive as an object

 再び先行研究の一部を挙げる。1つ目は「to不定詞は話者の意識の方向を表す」、2つ目は「to不定詞は不確かさ(uncertainty)を表す」という主張である。これらに共通しているのは、方向を表す前置詞toのイメージが強く表れているという事である。これから起こる事に対して向かっていくイメージの前置詞toのニュアンスを理解できれば、to不定詞の本質的な特徴は理解できるだろう。

Chapter III Characteristics of verbs which take both gerund and to-infinitive as an object

 ここでは動名詞とto不定詞両方を目的語にとり得る動詞についての先行研究を紹介する。preferは両方取り得るが、文脈次第では意味が変わってくる。

(3)
a. I prefer staying quietly at home to going to a cinema.
b. "Come and see a film tonight." ― "No, thanks; I prefer to stay at home."
(3a)では一般的に、話者は家に居るのが好きであり、(3b)では話者は「今夜は」家に居たいということが分かる。次も書き換え可能と教えられる例である。
(4)
a. His hobby is playing tennis.
b. His hobby is to play tennis.
しかし、習慣(hobby)を表すのであれば、これからする行為に向かっていくイメージのto不定詞より、事実を表す動名詞の方が適切であると言える。
 以上のような例に基づいて、私は「動名詞は主語となる人物に時間的や心理的に近いことを表す」「to不定詞は主語から時間的や心理的に遠いことを表す」と定義した。

 動名詞のイメージ        to不定詞のイメージ
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Chapter IV How to teach high school students proper uses of gerund and to-infinitive

 最終章では自らの定義を他の動詞に当てはめられるか検証する。
 まず間違いが多いconsiderというのは、「頭の中で考えている」という状況を意味する。よって主語の脳内で出来事が展開されているため、動名詞を使うと考えられる。また、suggestという動詞は「自分の手中にある意見を差し出す」という状況を表すため、心理的に近いことを表す動名詞を用いる。wishは「まだ実現していないこと」を表すため、心理的に遠いことを表すto不定詞を用い、agreeは「誰かに提案されたことに対して賛成する」という状況なので、心理的に遠いことを表すto不定詞を用いると考えられる。likeは動名詞が続けば、その行為が近くにある、すなわち主語は経験したことがあることを表す。よってlike Vingは「食べた経験があり、その行為を好きと思っている」と解釈できるのである。一方でlike to Vはその行為は心理的に遠く、つまり「これからすることに対して好きと思っている」状況を表し日本語では「これから〜したい」に近い意味となる。

Conclusion

 本論文の結論として、私は動名詞とto不定詞の違いを教える際に、「主語からの距離」に着目したいと考えている。無理やりルールを暗記させる教え方ではなく、本質的な違いを教えることで、英語は暗記が大変と感じる生徒が一人でも少なくなってほしいと願っている。