A Study of Semantic Extension with a Special Reference to Qualia Structure
(クオリア構造に関連した意味拡張の研究)

66期 AII 類 T. I.

Introduction

 この研究の目的は、意味拡張と品詞転換の考えを理解し、出来事を表す名詞が動詞に変わったときどのような意味になるのかを検討する。ふつうある単語の品詞を変えるときには、その単語に適切な接尾辞を付けることが原則である。しかし、そのような接尾辞の付加をせず、形を変えないまま品詞を変えることがある。そのような操作を品詞転換またはゼロ派生と呼ばれる。その中でも、本研究では例が多いモノを表す名詞がそのままデキゴト動詞として用いられる名詞転成動詞について的を絞って研究する。この研究においては、クオリア構造というものを導入して研究を進めていく。クオリア構造の役割は事物が本来的に備えている固有の性質を示すものである。クオリア構造を用いた名詞転成動詞の分析を行い、日々の生活において、名詞転成動詞がどのように使われているのかを研究する。

Chapter I Conversion

 英語における転換がどのようなものかということを検討する。転換とは、「接辞を付加せずに,ある項目を新しい語類に加えること、ないし転じること」と定義される。竝木(1985)による名詞転成動詞と動詞転成名詞の一般的な転換を例に挙げ、どのように分類されているかを示した。名詞転成動詞において、人工物を表す名詞がよく動詞に転換されているということを示した。転換は主に近代英語期に大いに増殖し、以来,英語の語形成と意味拡張に大きな影響を及ぼしてきた.現代英語の主たる特徴の一つといえる。これからも名詞転成動詞をはじめとする転換は英語の語彙に貢献し続けていくだろう。

Chapter II The Analysis of Semantic Extension in Denominal Verb

 本節では、まずクオリア構造について説明し、その後、動詞を作るもとになる名詞のクオリア構造を用いた名詞転換動詞の分析について取り上げる。
 クオリア構造とは、Pustejovsky(1995)で提案された意味表示である。クオリア構造は、構成役割、形式役割、目的役割、主体役割の4つから成り立つ。

  1. 構成役割はそのものがどのような成分や素材から成り立っているかについての知識が記載される部分である。
  2. 形式役割は、そのものがどのようなカテゴリーやタイプに属するのかを記載する部分である。
  3. 目的役割は、あるものを人間がどのように使用するのか、またある人間や動物が典型的にどのような動作をするのかに関する知識を記載する部分である。
  4. 主体役割は、誕生や発生に関する知識が記載される部分である。
クオリア構造の役割は事物が本来的に備えている固有の性質を示すものである。 クオリア構造を用いた名詞転成動詞の分析をした結果、目的役割が特に名詞転成動詞の意味形成において特に重要だということが明らかになった。

Chapter III Conversion in Modern English

 名詞転成動詞が新聞の見出しに使用されていることを指摘し、なぜ使われているかを分析した。一般的な動詞より名詞転成動詞のほうが見出しをイメージしやくするする効果がある。また、英語の構造的な点からいうと、be動詞や冠詞は省かれ、内容語のみが見出しとして使われる。新聞のほかにも、宣伝や広告などでも名詞転成動詞が使われている。そのような名詞転成動詞においても、目的役割が意味形成に使用されている。

Conclusion

 本研究では、名詞転成動詞における転換はクオリア構造を用いてどのように行われ、意味形成されるのかを示した。しかし、名詞転成動詞だけでなく、動詞から名詞、形容詞から名詞などさまざまな研究が必要である。転換のプロセスを知ることが、語彙の幅を広げることにつながると考える。