A Study of English Writing by Asian Learners
(アジア圏英語学習者による英語ライティングの研究)

66期 AII 類 N. S.

Introduction

 英語が国際語として世界中で使用される現代社会において、英語で発信することの重要性がますます高まっている。しかし、日本人英語学習者の英語ライティング習得には様々な問題がある。Torikai (2011) は、鳩山論文の日本人による英語訳と同論文のネイティブによる要約文を比較し、文章構造の違いを指摘した。これをもとに本研究では、日本語と英語の論理展開の違いと好まれるコミュニケーションの違いに焦点をあて、日本人学習者の英語ライティングおける問題点を明らかにしたうえで、解決策として効果的な指導方法を提案する。

Chapter I The Problems for Japanese Learners of English

 先行研究をもとに日本人学習者の英語ライティングにおける主な問題点を明確にする。Kaplan (1966) はアジア圏の言語と英語の論理展開をそれぞれ、中心に向かう渦巻状の矢印と直線の下向き矢印で示した。また、Yoshimura (2011) は日本語で書かれた論文と英語で書かれた論文を比較し、その書き方の違いを明らかにした。彼は、英語ライティングにおいては話し手/書き手が自らを客観視し、言いたいことから直線的に論理展開をすることが重要であると主張した。さらに、Ishikawa (2008, 2012) の研究によると、日本人学習者は英語ライティングにおいて使用する語彙に偏りがあることが示された。

Chapter I The Characteristics of English Writing by Japanese LearnersI

 学習者コーパス「ICNALE」を用いて日本人学習者に特徴的な結束語句の使用に関する調査を行い、その結果を考察する。@冠詞の使用、A代名詞の使用、Bキーワードとなる名詞の使用に関して、日本人学習者と英語ネイティブのエッセイを比較したところ、以下三点の日本人学習者による英語ライティングの特徴が明らかになった。

  1. 定冠詞、不定冠詞を用いたエッセイ内の名詞の展開が少ない。
  2. 前述の内容を示すitの使用が少ない。
  3. 同じ語の繰り返しが多い。
これらの特徴から、「英語的論文展開で書くための結束語句の使用に不慣れである」、「実用的な語彙が十分に習得できていない」という二点が、日本人学習者の英語ライティングにおける問題点として考えられる。

Chapter III Effective Ways of Teaching English Writing

 前章で明らかになった問題点をもとに、中学校における効果的な英語ライティング指導法を提案する。私は結束性と文章構造により重きをおいた評価規準を適用し、生徒同士で相互評価を行うことで、ライティング活動においてより一貫性のある説得力の高い文章を書く能力を養うことができると考える。また、クラスにおける具体的な活動として以下の二つを提案する。

 Paragraph Construction Activity (PCA)
  1. 英語的論文展開で書かれたエッセイを読み、その構造を理解する。
  2. 二文以上の結束性のある英文を書く習慣づけをする。
  3. パラグラフライティングを行い、相互評価をする。
 Vocabulary Improvement Activity (VIA)
  1. 様々な形式で書かれた英語を読み、実用的な語彙を習得する。
  2. 単語を類義語や上位語(下位語)のようなグループでまとめる。

Conclusion

 本研究では、コーパスを用いた調査により日本人英語学習者の問題点を探り、解決策となる指導法を提案した。しかし、問題の原因やより効果的な指導法を見出すためには更なる研究が必要である。例えば、他のアジア圏の英語学習者によって書かれたエッセイを比較対象とした調査はそのような研究において有用であると考える。