A Study of English Prepositions
(前置詞の研究)

66期 AII 類 S. I.

Introduction

 前置詞は、英語の文法範疇の中で、空間や時間的事柄を表すのに必要不可欠なものである。にもかかわらず、中学校では「前置詞とは何か」ということすらほとんど教えていない。例えば、onという前置詞は「〜の上に」を意味すると教えるのみである。これでは、難しい前置詞を理解し、使うことはできない。この論文では、最も基本的な前置詞とされるin, at, onを扱い、その意味や違いを明確にしていく。さらに、一般動詞を使用しない「be動詞+前置詞」の表現力や有用性にも着目し、例文比較によって、その構造を分析する。これらの分析を通して、中学校において前置詞を効率的・効果的に指導するにはどのようにしたら良いかを考察する。

Chapter I The Spatial Images of Three English Prepositions and Their Meaning Extension

 前置詞には、それぞれ一つの「中心義(中心的な意味)」が存在する。そして、前置詞が持つ多くの意味は、中心義の視点を変えることによって派生していくものである。この章では、in, at, onの中心義をOxfordDictionaries.com.に基づいて設定し、それぞれのもつ多様な意味がどのような視点から派生していくのかを明らかにする。

1. The Core Meaning of In and Its Meaning Extension
 inの中心義は、「何かが何か他の物に覆われて(囲まれて)いる状態」というものであり、意味が派生する視点は以下の4つに分類される。
 [1] 何かが何か他の物の中にあることを認識している
 [2] 何かが何か他の物の中に入ってくるのを内側で認識している
 [3] 何かが何か他の物の中に入っていくのを外側で認識している
 [4] 何かが何か他の物の中へ移動するのを内と外の境界線上で認識している

2. The Core Meaning of At and Its Meaning Extension
 atの中心義は、「ある特定の場所(位置)にける所在(到着)」というものであり、意味が派生する視点は以下の3つに分類される。
 [1] 遠くから全体を見た中の一点
 [2] 動いている中の一点
 [3] 一点に限りなく接近

3. The Core Meaning of On and Its Meaning Extension
 onの中心義は「何かが表面に接触、または表面によって支えられている状態」というものであり、意味が派生する視点は以下の2つに分類される。
 [1] 接触する主体視点
 [2] 接触される客体視点

Chapter II The Differences in Usage among the Prepositions with Similar Meanings

 多くの前置詞には似通った意味があり、その微妙なニュアンスの違いを判別するのは困難である。この章では、第1章で分析した中心義や視点を基に、in, at, onの似た用法の違いを考察する。2.1では、in, at, onがもつ「場所・位置」を表す用法を、例文を用いて比較した。inは空間的広がりと覆われている状況、atは漠然とした位置、onは空間を意識しない平面的な場面で用いられ、動詞などにも影響を受けることがわかった。2.2では、「状態・活動」を表す用法を、主にin work, at work, on the jobという表現の比較を通して分析した。inは期間(時間的広がり)、atは場所、onは時間的な解釈から他の意味に派生していくこと、またonには「特定の境界をもつ部分との接触」を示すという特徴があることがわかった。2.3では、「時間」を表す用法を比較した。inは時間的広がりのある「期間」を表し、atは時間的広がりが意識されない状況で「時点」を表している。そして、onの「特定の境界をもつ部分との接触」を示すという特徴が、「日にち」や「特定の時間帯」に現れていることが分かった。

Chapter III The Expressiveness of Constructions of Be Verb and Preposition

 映画や日常会話では、しばしば「be動詞+前置詞」の表現が用いられている。「be動詞+前置詞」が、会話において用いられるのは、それが一般動詞を使った複雑な文と同等の表現力をもち、なおかつ簡単な表現で扱いやすいからではないかと推測できる。この章では、be動詞とin, at, onを使った英文を分析し、その表現力や有用性について考察する。inは、精神状態や行動、身体的状況をよく表し、文によっては時間的広がりのある現在完了的な使い方をbe動詞のみで表すことができる。atは、動きの中の一点や漠然とその方向を表す際の例文が多く、onは出来事との時間的接触がまさに今起こっていることをbe動詞のみで簡潔に表していることがわかった。また、各例文の特徴や前置詞の使用は動詞などに影響を受けることから、「be動詞+前置詞」の文は前置詞の特徴をよく表していると言える。このことから、簡単な例文であれば、各前置詞の特徴をつかむための教材にもなり得る。

Conclusion

 前置詞には、慣用的な使い方があるのも確かである。しかし、それぞれの前置詞には中心義や特徴があり、視点を変えることによってさまざまな意味が派生するということを理解することによって、前置詞を正しく使うことは可能である。また、「be動詞+前置詞」の文は、この論文で紹介した例文以外にもまだまだたくさんあり、さらなる表現の可能性と探求の価値がある。そして、第1章から第3章を考慮すると、前置詞の教育への効果的な導入には、第一に「前置詞とは何か」を生徒に理解させ、第二に中心義を教えることが重要である。そうすることで、後に出てくる様々な意味は、常に中心義を基に考えることができる。余裕があれば、前置詞の特徴をよく表す「be動詞+前置詞」の簡単な例文を比較することで、各前置詞の使い分けについての理解がより深まるだろう。