Functions of Journalistic English
(新聞英語の機能)

65期 AII 類 K. M.

Introduction

 この論文では、新聞英語の機能、働きに着目して、新聞英語が読み手に対してどのような役割を持っているのか、新聞英語が持つ、いくつかの特徴を考えながら論を進めていく。

Chapter I Grammar and Usage of Journalistic English

 この章では、新聞英語の文法、用法について述べる。新聞英語の特徴である以下のの3点について述べる。
 (1) violation of the sequence of tenses 「時制の不一致」
 (2) adjectival use of noun parataxis 「名詞並列による形容詞的用法」
 (3) use of apostrophe possessive case of the inanimate nouns 「無生物の所有格の使用」
 
 時制の不一致に関しては、ネイティブスピーカーの会話文との関連性について考察し、どのような役割があるか考えた。ネイティブの会話文は、たいてい時制の一致の規則に従っていないことと関連し、読み手にいかにも特集されている出来事が起こっている雰囲気や緊張感、即時性を与える役割を持つのではと考えた。また、ネイティブは自身の体験を述べる時、時制を現在形や現在完了形を用いることが多い。つまり新聞英語においても、記事を書くレポーター次第で時制の一致を行うか否か変わってくるのではという考えに行きついた。
 名詞並列による形容詞的用法に関しては、この用法のため、新聞英語の特徴の一つであるたたみかける感じが失われてしまう。英語に不慣れな人には理解しがたい用法である一方、限られたスペースに情報を簡潔にまとめ、読み手に見たら内容が分かる役割を持っている。
 無生物の所有格の用法に関しては、 'Japan's' と 'Japanese' の使用の違いについて考察した。Japan'sは、「日本国が所有する、日本国に属する」という意味で使用され、たとえば、日本国の経済力や経済状況などの意味を込めて表現したいとき、 'Japan's economy'と言われることが多々ある。一方で、 ' Japanese' は、「日本の、日本人の」という意味で使用され、たとえば一般的な意味で日本の経済と表現したいとき、 'Japanese economy' と言われる。後ろに置かれる名詞や表現したい意味によって、アポストロフィの使用に違いが出てくるのではという考えに行きついた。
 この章では、新聞英語の特徴をいくつか述べ、三章で実際の新聞記事を扱うために理解を深めることに繋げていく。

Chapter II The Style of Newspaper Articles

 この章では、新聞記事のスタイルの特徴を2つ取り上げた。1つはピラミッド型と逆ピラミッド型について、もう1つはHeadline (見出し)について取り上げた。
 新聞記事の特徴である逆ピラミッド型について英米で違いがみられた。アメリカの記者は昨日書いたことを繰り返し書く用法を思慮深いスタイルと考え、理由は2つある。1つはスペースの考慮から、削除されていてもいい場所にそのような内容を書くため、もう1つは、読み手がいつ読んでも、その事件等の内容が分かるように考慮するためである。一方で、イギリスの記者はアメリカのスタイルを時代から外れたスタイルと非難し、2、3日前に書いた記事を繰り返し書くことを嫌っている。三章で扱った時制の不一致の用法に極端な差がみられたのは、このように非難する点などの社会的背景が存在しているのではと考えた。
 もう1つのスタイルの特徴は、新聞記事の見出しについてである。英字新聞の見出しは理解するのが難しい。理由は特別なスタイルで書かれ、通常の英語とはかなり異なっているためである。このスタイルには、文法の特別なルールが存在する。読み手に与える役割としては、目を通しただけで記事の内容を把握することができる。レポーターの視点からでは、読み手にインパクトを与える見出しを書きたいがために、特別な文法的ルールが存在するのではないかと考えられた。

Chapter III The Analysis of Newspaper Articles

 この章では、これまでの章の内容を踏まえて、英米での実際の新聞記事の分析を行った。今回の論文では、新聞記事の特徴の1つである「時制の不一致」に焦点を当てて行った。特徴的な差としては、アメリカ新聞は、時制の不一致を頻繁に行っている一方、イギリス新聞は時制の一致を使用している記事がほとんどであった。この背景にあるのは、二章でも取り上げたのだが、アメリカのスタイルをイギリスが非難している点との関連から、このスタイルの極端な差は、社会的背景が存在しているのではないかと考えた。これに加えて、アメリカのAP通信の特徴として、時制の不一致が挙げられるところからも、アメリカが時制の不一致を頻繁に行っている裏付けになるとも考えられた。またこの考えの根拠となる調査結果を提示している。

Conclusion

 新聞英語の特徴には、現在、読み手に与えているような影響が多数存在する。その特徴の1つである時制の不一致の用法に英米に差があったのは確かである。今までは新聞とは自身から遠い存在であったが、各特徴の知識を獲得し、確実に理解を深めた上の視点で新聞というものに携わっていきたい。英文の比較の際、今回の論文では、時制の不一致にしか焦点を当てることができなかったので、他の文法面での特徴に関してさらなる違いがあるのか理解を深めていきたい。インターネット等の普及により、紙媒体の需要が低い中ではあるが、新聞の現在の様式を決して変化していくべきではないと考える。