On the Use of the Present Perfect
(現在完了の使用法)

64期 AII 類 M. S.

Introduction

 この論文では、現在完了を教える上での問題点を述べ、さらに、中学校で現在完了を教える方法を提案する。多くの中学生は、現在完了を正しく使うことができていない。その原因の1つは、現在完了と過去形を混同しているからだ。これら2つの違いを明確に教える必要がある。

Chapter I Nature of the Present Perfect

 この章では、現在完了の本質を過去形と比較しながら考察する。この論文では、現在完了の本質を、「現在との関連をもつ過去の出来事や状態を表すもの」として取り上げる。そしてその意味合いを「経験」、「結果」、「継続」の3つの用法に区分する。「経験」は、「出来事動詞」で表される事象が、不定の時に起こったことを表す。「結果」は、「出来事動詞」で表される事象が、現在に関わりをもつことを表す。「継続」は、「状態動詞」や「出来事動詞」で表される事象が、現在まで続くことを表す。一方で、「過去形」の本質は、「現在との関連をもたない出来事や状態を表すもの」、「話者が特定の時をもつもの」である。まとめとして、現在完了と過去形の根本的な違いについて明確にし、2章で扱う「現在完了を教える上での諸問題」に繋げていく。

Chapter II Problems of Teaching the Present Perfect in Junior High School

 この章では、中学校で使用される教科書中の現在完了の導入の仕方について取り上げ、その問題点を提示する。教科書の導入方法については、現在完了の3つの用法の学習順序について触れる。また、それぞれの用法を表した図、用いられている例文についても吟味する。「経験」と「結果」の例文に「出来事動詞」が使用されているか、また、「継続」の例文で用いられる動詞が「状態動詞」であるか調査する。それに加え、3つの用法についての説明が、現在完了の本質を捉えているか、現在完了と混同しがちな「過去形」との違いが明瞭であるかについて考察する。教科書の図や、例文で使用されている動詞、「継続」の説明については問題がなかった。しかし、「経験」と「結果」の説明は、「過去形」との違いが不明瞭である。これらの用法については、説明を改めるべきである。

Chapter III How to Teach the Present Perfect

 この章では、現在完了の本質、それぞれの用法の教え方に加え、その導入順序を提案する。まず、現在完了の本質の理解を促す問題を提示する。次に、教科書の問題点を踏まえ、それぞれの用法の説明の仕方、過去形との違いを明確にする導入方法を提案する。それらに加え、共に使われる頻出の副詞 (twice、already、since など) についても扱う。最後に、現在完了を扱う上で、「継続」、「結果」、「経験」の順で導入することを提案する。その根拠については、それぞれの用法を表した図や、それぞれの用法が、「現在との関連をもつ過去の出来事や状態を表すもの」であるかをもとに述べていく。