Change of American English: with Special References to Its Vocabulary
(アメリカ英語における語彙の変遷)

62期 AII 類 S. F.

Introduction

 アメリカ大陸に英語がもたらされてから今日に至るまで、アメリカ英語がどのような変化をしてきたのか、特に語彙に注目して調べる。その上で、将来的にどのような変化が起きるのかを予測する。

Chapter I

 アメリカ大陸に英語がもたらされたのは17世紀に入ってからである。1607年にジェームズタウンを建設して以降、イギリスはアメリカへの植民地政策を本格化し東海岸に次々とイギリスの植民地を建設、入植をすすめていった。後、これら東部13州が1776年に独立宣言をし、アメリカ合衆国の起源となる。この後も、アメリカ大陸には、不況や飢饉を逃れて様々な人々が入植していく。その中で、アメリカ英語は様々な言葉を吸収し、本国イギリスとは違った発展をしていく。
 19世紀末、アメリカでは第2次産業革命が起き、人々の生活は激変した。重工業が発達し、車や飛行機などの新しいものが増大した。carやairplaneといった単語が、今日のような意味として使われ始めたのは、この時期である。20世紀に入ると、2つの大きな戦争と共に、工業は著しく発展し、多くの技術革新が起きた。その中で、新しい技術が生まれ、英語の単語として命名された。Atomic BombやRaderといった単語が生まれる。ちなみに、RaderはRadio Detecting And Rangingの頭文字をとって作られた単語である。第2次大戦が終わると、世界情勢はアメリカとソ連の2極体制へと移り変わり、アメリカは西側諸国のリーダーとして、世界に君臨する。その中で、日本や東南アジア、中南米への影響を強め、同時にアメリカ英語を輸出していく。アメリカとソ連の2つの大国は、冷戦という形で対立し、お互いにお競いあっていく。redが社会主義を示す言葉として多く使われるようになったのはこの時期である。さらにこの競争の中で、多くの新技術が開発され、英単語は新しい意味を劇的に増やしていく。

Chapter II

 1989年に冷戦が終わり、1991年にソビエトが崩壊すると、アメリカの一極支配体制となった。こうした中で、軍事的脅威は減り、多くの軍事技術が民間に転用される。その中で、インターネットは人々の生活を大きく変えることになり、アメリカ英語の語彙に関しても大きな影響をもたらすことになる。IT革命と呼ばれるそれは、世界各地でリアルタイムに交信でき、携帯電話の普及によって、人々の生活は劇的に便利なものとなった。E-mail、virus、cyberなどの単語に着目すると、その変化が分かる。E-mailは今日では、紙面でのMailよりも身近なものになり、MailがE-mailの意味で主に使われるようになってきている。また、Virusは病気の原因となるウィルスだが、コンピューターウィルスの登場に伴い、その意味を持つ様になっている。Cyberは、Cyberneticという形容詞から作られた新しい形容詞である。このように、IT革命によって生まれた新しい技術は、瞬く間に人々の生活に浸透し、それを示す言葉が生まれた。
 今日では、他にもイスラム圏との戦争の中で、Jihadのようなイスラム文化圏の言葉を取り入れている風潮や、バラク・オバマ氏が大統領となったことで見られるように、アフリカ系アメリカ人に対する差別用語などの使い方の大きくかわりつつある。現在ではAfrican-Americanと呼称するようになった。

Chapter III

 過去から今日までの移り変わりを見て、今後アメリカ英語がどうなるかということだが、語彙は今日よりももっと多くなることが考えられる。地球上には、未知のままである分野が多々ある。さらに、宇宙開発が進んでいるので、宇宙空間に存在する未知数のものや現象がこれからさらに発見される度に、新しい語彙が生まれたり、既存の語彙の意味が増えたりするだろう。インターネットを通じて、異文化の人とコミュニケーションをとることが容易になったので、今後そうした文化圏の言葉が英語に入ってくることも予想される。ただし、日常で頻繁に使われる語彙に関しては、肥大化することはないと思う。それは、日常で使うものは変わらないので、使わなくなった技術の言葉はだんだん使われなくなり、忘れられていてしまうからである。日々、新しい技術が生まれているということは、日々古い技術が使われなくなっていっているということである。
 次に考えられるのは、英語が簡略化されるのではないかということである。より多くの人が英語を話すようになっていくのはほぼ間違いないと思う。すると、難しい単語をあまりに使うとコミュニケーションに祖語が生まれる可能性があり、より簡略化をされる可能性がある。インターネット上でよく使われる略語のように、簡素にされた言葉が生活の中に逆輸入される可能性もある。

Summary

 英語は今日世界中の人々が話している言語である。アメリカはその強大な力を背景に世界中の国々に影響を及ぼしている。その結果、世界中の文化に触れることで、逆にその影響を受けている。その中で、人々が自分達が使いやすいように変化させていくのではないだろうかと考える。