How to Use the Articles
(冠詞の使用について)

59期 AII 類 Y. H.

Introduction

冠詞を持たない日本語を使う我々日本人にとって、冠詞の使い分けは易しいものではない。また、冠詞を持つ英語以外の言語でも、冠詞の用法が英語のものとは違う場合もあるため、冠詞を持つ言語を母国語とする人であっても正確に英語の冠詞を使いこなせるとは限らない。そこで、本論文では、英語における冠詞選択の基準を明らかにし、適切に冠詞を用いることができるようにする。

Chapter I Nouns

第1章では冠詞の決定に不可欠な可算・不可算の基準、および単数・複数の定義について扱う。通常不可算名詞として用いられる物質名詞や抽象名詞がなぜ可算名詞として扱われることがあるのか、また「単数は1つを表し、複数は2つ以上の数を表す」という認識を我々は持つ傾向にあるように思うが、それでは0や1.5のような数は単数・複数のいずれなのだろうかということについて考察する。

Chapter II Definite / Indefinite Articles as Determiners

定冠詞や不定冠詞は決定詞の一種である。決定詞とは名詞の前に置かれることによって、話し手の指示対象や名詞の数量を示す語のことである。本章で決定詞の機能について考察することで、次章で決定詞ではないゼロ冠詞(無冠詞)との差異を明らかにする。また、定冠詞・不定冠詞の決定詞としての働きについて述べることで、「同一物中での最上級には定冠詞を用いてはならない」といった文法規則をより適切に示し直す。

Chapter III Zero Article

決定詞である定冠詞・不定冠詞に話し手の指示対象を示す働きがあるというのならば、決定詞ではないゼロ冠詞には話し手の指示対象を示すことはできない。このことをふまえて形の有無、意味の有無、機能の有無という3つの観点からゼロ冠詞の使用方法について述べる。

Chapter IV Indefinite Article

不定冠詞は数量に焦点の当たった数詞oneと異なり、話し手が言及している具体的な対象が聞き手にとってわからないものであるということを示す。この指示対象をはっきりとさせないという特徴が‘A mother will love her children.’のような文に見られる、物事全般に当てはまる一般論を表すことなどに繋がっていくことを示す。

Chapter V Definite Article

不定冠詞とは対極的に定冠詞は話し手の指示する対象が聞き手にとってわかる場合に用いる冠詞である。ここでの指示対象が聞き手にとってわかる場合というのは周囲の状況や文脈によって言及対象がはっきりとしているときなどだけでなく、我々が共通に持つ既成概念などによって聞き手に指示対象が分かる場合をも含む。また、定冠詞の基本的な意味が「最高」という意味や区別を表すことにも繋がっていく原因についても考察する。

Conclusion

冠詞の使用規則には例外的なものも多く、完璧に使いこなすことはなかなか難しいことのように思われる。しかし、冠詞の基本的な使い方やその基本的な使い方がどのように派生して特殊な使われ方をするようになるのかを知ることで、冠詞とは手に負えない厄介なものなどではないということを理解していただければ幸いである。