Everyday Metaphors in English and Japanese
(英語と日本語における日常の比喩)

56期 AII 類 N. T.

Introduction

多くの人は、比喩は詩などの文学作品に登場するものであり、私たちの生活には直接関係ないものだと思っている。しかし、比喩は日常会話でよく使われており、私たちは比喩が使われていることに気づいていないことが多い。数多くある比喩の中で、本論では「上―下」「中―外」「容器」の比喩を扱う。日常会話で使われる比喩には、人々のものの見方、人間関係の理解の仕方が表れている。それらは文化的な見方に由来していることが多い。新聞や小説、日常会話に登場する比喩の例を取り上げ、なぜ比喩が存在するのかについて述べていく。その際、日本語と英語の比喩の相違点も文化的な面から比較していく。

Chapter 1 Up-Down Orientational Metaphors (上―下の方向付けの比喩)

英語においても日本語においても、Up (上) は、幸福や健康、美徳、地位が高いことと関連して使われ、Down (下)は悲しみ、病気、悪徳、地位が低いことと関連して使われることが多い。しかし、例を見ていくと、英語と日本語において比喩への依存の度合いが異なることがわかる。例えば、地位の高さを表す比喩の例は日本語の方が豊富であることから、日本人の方が地位の上下に対する意識が強いことがわかる。「上司」、「部下」、「高官」、「下っ端」などがそうである。比喩は、目には見えない人々のものの見方、理解の仕方を忠実に表したものなのである。

Chapter 2 In-Out Orientational Metaphors (内―外の方向付けの比喩)

ここでは主に人間関係の距離を表す比喩を扱う。英語でも日本語でも、In (内) は関係の親密さ、Out (外) は疎遠さを表す。しかし、この比喩の英語の例が少ないのに対して、「身内」、「連中」、「内縁」、「内輪揉め」といったように日本語の例は豊富である。日本人は人間関係の内外に強い意識を持っていることがこうした比喩からわかる。こうした考え方は比喩という形でのみ表され、比喩によって私たちは見たり理解したりできる。比喩なしでは私たちはこのような考え方がされているのか見ることができないのである。比喩はそういった点で、とても役に立つ方法である。

Chapter 3 Container Metaphors (容器の比喩)

Chapter 2の比喩と関連して、容器の比喩について述べる。ここで、mind (心) events (出来事) activities (活動) states (状態) が比喩的にcontainers (容器) であると見なされている。これらは物理的な形が無く、抽象的なものであるが、容器と似た点があるので、容器としてとらえることができる。 英語では、‘Keep in mind ~.’, ‘ In the race, ~.’ 日本語では、「心の中」「心外」などである。抽象的なものも、容器として理解すれば、理解がしやすくなる。容器の比喩は、抽象的なものを理解するのを助けてくれるのである。私は、抽象的な考えを捉えようとするために、比喩は生まれたのではないかと考える。

Conclusion

比喩は私たちの日常生活に浸透している。それは、単なる言葉だけの問題ではなく、私たちのものの見方なのである。私たちは、比喩を使うことで新しい世界を言葉で表現することができる。比喩は本当に役に立つものであり、人間が知的に生活するためになくてはならないものなのである。