A Comparison Between the Ways of Thinking in English and Japanese
(英語と日本語における発想法の比較)

52期 A 類 K. Y.

Chapter I Introduction

問1."water"を日本語にすると何ですか?

と聞かれたら「水」と答えたくなりませんか。しかし、これは完全な解答ではありません。「水」というと「冷たい」というニュアンスが含まれますが、"water"には「冷たい」というニュアンスは含まれません。つまり、英語では水という液体を温度で区別する概念がないのです。水とお湯を英語で表すなら、"cold water""hot water"になります。このような、発想法の違いに焦点をあて、4つの観点から英語と日本語を比較していくことにしました。

Chapter II A Flexible Language and a Formal Language

問2.以下の日本語と英語のなかで、英文にはあって日本語文にはないものは何でしょう?

彼は上着から拳銃をとりだした。
He took his gun out of his jacket.

「日本語は柔軟な言語であり、英語は形式的な言語である」という特徴が見られやすいことについて考えていきます。こういった特徴は文中での主格や所有格、目的格の有無によく表れます。日本語では、わかっていることは言わない場合が多いが、英語ではわかっていることでも、形式(form)に従って省略しない傾向が強いようです。

Chapter III An Obvious Agent and a Vague Agent

問3.次の英語を日本語に訳してください。

二人の男性が山道を歩いていた時、一人が突然立ち止まって言いました。
"I hear a Voice !"

日本語では行為者(Agent)が不在の文が多い傾向があるのに対して、英語では人間の行為が中心である傾向が見られます。先ほどの英文ですが「俺は声を聞いている!」と訳す場合と「声が聞こえる!」と訳す時とどちらが日本語らしいでしょうか。英文では必ず、主語がなくてはいけないという文法上の規則があります。多くの場合、その主語は行為者であり、「誰がどうした。」という文型になりやすいです。それに対して、日本語では物事が人為的ではなく、自然に起きたり、自然に存在しているかのように表現することを好むようです。前を歩いている人が財布を落としたのを見たあなたは、何と言ってその人を呼び止めますか。「財布を落としましたよ」ですか。それとも「財布が落ちましたよ」ですか。どちらも、自然な日本語です。しかし英語では「財布が落ちましたよ」という"your wallet dropped"は不自然な言い方になります。

Chapter IV A Distinction Between "I" and "You"

問4."I"と"You"をそれぞれ日本語にしてください。

日本語と英語では「自分」、とコミュニケーションをしている「相手」を捉える感覚が違います。英語ではほとんどの場合自分のことを"I"と言い、「相手」のことを"you"と言いますが、日本語には「自分」を指す言葉、「相手」を指す言葉が数多くあります。

自称詞・・・ぼく、わたし、おれ、こっち、あたし、せっしゃ、わし
対象詞・・・あなた、おまえ、きみ、そちら、きさま、おぬし

このように、たくさんある呼び方の中で、日本語話者は無意識にこれらを使い分けています。会社の上司と話す時に、上司のことを「おまえ」とは呼びません。また自分のことを「おれ」とは言いません。日本語の自称詞・対象詞は自分と相手との関係を示す一つの指標ともなっています。

Chapter V The Way of Grasping Tense

問5.日本語には過去完了という過去の表し方がありません。では英語で、過去完了を使って表現する際に、日本語ではどのように表現するのでしょうか。

I had washed my hands before I ate dinner.
ご飯を食べる前に手を洗った。

英語において、話し手の視点は常に、発話の時点(現在)に固定されています。過去に起こった出来事を現在とどのように関係づけるかによって、完了形を用いたり、過去形を用いたりしています。日本語では話し手の視点は過去や未来を自由に行き来するため、英語のように現在との結びつきが、言語にはっきりとはあらわれにくいのです。
英語では時制と相を組み合わせることで12種類の「時」を表すことができます。それらを使いこなすことで単に「時」を表すだけではなく、その他の情報も伝えることができます。

He might look younger if he shaved off his beard.
He may look younger if he shaves off his beard.

過去形で表されているか、現在形で表されているかによって、話者が彼(he)がひげを剃る見込みをどれくらいと捉えているかがわかってきます。前者は「彼」がひげを剃らないであろうことを前提として過去形で表現されています。

Chapter VI Conclusion

英語と日本語における発想法の違いはChapter2-Chapter5で挙げた4つだけではありません。ある1つの事象をどのように切り取るかは文化によって違い、その違いが言語へと表れます。日本では水という液体を温度で区別するが、英語圏ではそのような区別はしない。日本語を母国語とする私たちが英語を学ぶ時に、日本語の発想法を念頭に置いたまま、単語や文法だけをすりかえても、それは本来の英語を学んだことにはなりません。発想法は、自国のものも他国のものも頭の中で展開されることであり、目で見ることができません。それゆえに把握することはかなり困難だと思われますが、本当の言語を学ぶためには無視できないものでしょう。発想法の違いを認識して初めて、本来の「言語」を学んでいると言えるのではないでしょうか。