On Second Language Acquisition
-The Significance of Simplified Instructions of Grammar-
(第二言語習得 ― 分かりやすい文法教育の重要性 ―)

51期 II 類 S. Y.

Chapter 1: Introduction

日本の英語教育のあり方について様々な議論がなされていますが、その中でも文法に重点を置いた今の教育方法を見直す考えと、やはり基礎となる文法をしっかり学ばせるべきだという意見の対立はよく耳にします。文法中心ではなく話したり書いたりといった実用的な能力を伸ばすべきだとする前者の意見ももっともですが、だからと言って文法を学ぶことをやめたりその時間を減らし実践的な活動をするだけでは英語は身につくのだろうか、という疑問からこの題材を取り上げました。そして文法教育はいかに大切か、どのように学習を進めるのが効果的かなどを論じていきます。

Chapter 2: The Sequence of Learning

語習得には一定の順序があり、全ての学習者が同じような段階を経て目標言語を習得することが学習者の誤りを分析することによって分かります。

1. The subjects used no + V
  e.g., I no can see
  They no have water

2. The subjects used don't + V
  e.g., I don't can explain
  He don't like it

3. Auxiliaries (usually is and can) and copula is are followed by not
  e.g., No, he's not skinny
  It wasn't so big

4. Analyzed forms of don't (do not, doesn't, does not, didn't, did not) appear
  e.g., She didn't believe me
  It doesn't make any difference

上の例のような誤りは第一言語、第二言語習得に関わらず全ての学習者に見られます。しかも周りの大人や教師はこのような誤りは犯さないはずなので、言語習得は単に模倣(imitation)だけではないことが分かります。さらに、矯正(reinforcement)だけでも習得はできないことが次の例から分かります。

Child: Nobody don't like me.
Mother: No, say "Nobody likes me."
Child: Nobody don't like me.
(dialogue repeated eight times.)
Mother: Now, listen carefully, say "Nobody likes me."
Child: Oh, nobody don't likes me.

このように何度訂正されてもこの時点で学習者は正しい文法規則を習得できませんでした。これは複雑な構造のこのような規則を習得する段階に達していなかったためだと考えられます。単純な構造から徐々に複雑なものを学んでいくのは全ての学習者に共通で、その流れにあった教材を教師が与えてやると最も効率よく学習できます。

Chapter 3: Relation with Age

早期英語教育の有用性が問われていますが、研究の結果、年齢が若いうちに始めた方が身につきやすいのは音声面だけです。音声面に限っては臨界期である12歳以前に身につけないとnativeのようになるのは難しいようですが、その他の分野はある程度の知識をもった大人の方が有利であると考えられます。そこで日本の教育においても小学校から英語を取り入れるべきだという考えが出ているがこれはよい傾向だと思います。しかしここで間違えてはならないのは今まで中学校で行っていた英語の授業を小学生にするのではなく、小学校は音声面を中心に英語に親しみ、興味を持たせる程度にすることです。つまり英語を第一言語とする国に生まれた赤ん坊がまだ何も分からないうちに英語で話されるテレビを見たり音楽を聴いたり周りの会話を聞いて意味や文構造を理解せずに言葉を発し始めるのと同じ段階を小学校でするのです。活動の例としては、歌やゲーム、お芝居などで、それらを通して英語を聞き、話し、楽しめればよいと思います。
 では、中学校以降の英語教育ではコミュニケーション能力を伸ばす教育はできないのでしょうか。もちろん方法次第で実践的な能力も伸ばせるはずですが、近年ゆとりある教育が進められる中、英語にあてられる授業時間数を考えた上で最低限必要な文法事項の学習にほとんどの時間を費やさなければならないのが実状です。先にも述べたように文法を学ぶことを軽んじては英語を身につけることはできないので、使える英語を身につける第一歩はやはり基礎となる文法を知ることだと思います。

Chapter 4: Pidgin and Creole

ピジン語、クレオール語を大まかに説明すると、ある言語の変種だと言えます。つまり、本来の文法や発音がきちんと教育されなかったためにそれぞれの話者が本来の言語とわずかに異なる独自の規則を作り、それがコミュニケーションの手段として用いられた結果、生まれた言語です。この章ではそれらの言語が、習得途中の段階にいる学習者が使う言語に似ている点を取り上げて考察しています。
 英語を習得する目的の一つは異なる母国語を話す人たちが、コミュニケーションするために共通の言語を知る必要があるということでしょう。しかしもし正確な文法教育が行われなければ次々にピジン語やクレオール語のような変種が生まれてしまい、お互いに理解しあうのが難しくなってしまいます。学習者が習得途中で犯す誤りは、ピジン語やクレオール語に非常に似ているので基本的な教育をせず放っておけば、このような変種を使いつづけてしまう恐れがあります。そこで、誰もが理解できる正確な文法や発音を基礎から教えることが母国語、第二言語どちらの習得においても必要であることが分かります。

Chapter 5: Conclusion

日本人にとっての英語のように、日常生活で目標言語に触れることの少ない場合は特に文法教育が必要なのです。いくらコミュニケーション能力を伸ばそうとしても、まず基礎となる文法がわかっていなければ先には進めません。教師は年齢や学習段階に応じた教材や方法を吟味して、基礎から応用という順に徐々に教えていく必要があると思います。