Communicative Devices of English Advertisement
(宣伝広告におけるコミュニカティブディバイス)
51期 II 類 K. T.
Chapter 1 Introduction
広告は私達の日常生活のあらゆるところに見られる。そして私達は広告によって何らかの影響を受けている。広告主は情報を一方的に発信しているだけではないのである。「広告と受け手との間にはコミュニケーションに関わる問題が存在する」という観点から、1章ではまず広告そのものの性質や特徴について考察する。
宣伝広告には必ず達成すべき4段階が考えられる。これを4 principlesとして挙げる。
- It must draw attention to itself. …………… Attention value
- It must sustain the interest. ………………… Readability
- It must be remembered. ……………………… Memorability
- It must prompt the right kind of action. … Selling power
communicative devices は言語的なものだけでなく、非言語的要素によるものももちろん含む。そこで、4つの principles を軸に、それぞれを純粋に言語的な要素から非言語的要素(例えば「新しいものにはひきつけられる」「疑問点は解決したくなる」といった私たち人間のもつ性質、言語使用においての特性等)と順に考察していく。このような論述のおおまかな流れを示す。
Chapter 2 Attention getting Devices
この章では、注意をひくための devices、ひきつけた興味関心を持続させる( attention retaining )ための devices について扱う。私たちには、新しいもの・変わったもの・驚かされるものにはひきつけられ、心地よい所にはとどまっていようとする等の性質がある。注意をひくため、興味関心をひきつけつづけるための devices は、主に言語的な操作による工夫から人間の性質を利用してつくるものまで幅広くみられる。ことばの面での工夫の例としては、新語・造語の使用、意図的な文法規則違反、奇抜な比喩的言語の使用等があるが、それらの見られる例を挙げ、考察する。
人間の性質を利用した devices としては、言語活動上の性質を利用したものが特徴的なものとして挙げられる。例えば、投げかけられた問いかけに対しては自然と応答してしまうといった性質がある。このような性質を利用したフレーズで、われわれを自然とひきこんでいる例を見ることができる。
Chapter 3 Memorability
Memorabilty は宣伝広告にとって重要である。記憶されやすさは、宣伝広告の効率を上げるための重要な要素である。また、人々の記憶に残るということそれ自体が商品の宣伝となると考えられる。第三章では記憶されやすくするための様々な工夫の中で以下のものに特に注目する。
- Repetition(繰り返し)・・・ 繰り返しは強力かつ有効な方法である。
繰り返しにも全く同じものを繰り返す(exact repetition)他に、句の一部をそろえたり、句の構造をそろえたり(structural parallelism)という方法がある。 - 音韻を使う ・・・ 音韻も、ある音のパターンの繰り返しという意味ではrepetitionの利用である。韻を踏んだフレーズは、耳にした感じ、口に出した感じが心地よいという長所もあるのでそのためさらに繰り返されやすく、覚えやすくもなると思われる。structural parallelismと韻の併用はよく見られる方法であり、これによってキャッチフレーズ等の定着をはかることができると思われる。
- 驚いたことや興味関心をもつことは記憶に残りやすい、シンプルなものは覚えやすい、という人間の記憶の特性の効果的な利用がなされているようである。
- パロディなど既知のものを用いて記憶に残りやすくする。なじみのあるもの・親しみを感じるものは受け入れられやすいことを利用して広告を構成するなどの工夫がみられる。
Chapter 4 Selling Power
消費者を実際に購入するという行動へと結びつけることが広告の最大の狙いである。消費者を買いたい気持ちにさせると思われる工夫について考える。重要なものに「商品が良いものであると思わせる」ことが挙げられるが、そのための工夫について2・3章をふまえ、分析する。
- 「広告はイメージが重要である」好ましいイメージをつくる方法について
- 比較級、最上級の多用で作りだす効果的なイメージ、選ばれたことばで作るイメージ(商品名やキャッチコピー)、brand name
- より良い効果的に機能するイメージを作るため、使用する言葉の選択、商品名やキャッチコピーに見られる工夫、また、心理的に揺さぶりをかけることも強力な手法であると思われる。消費者の疑問点や不安を露呈し商品購入の必要性を訴えたり、理想的なスタイル等を掲げて購買意欲をあおるなどの方法が使われている。
Chapter 5 Conclusion
各章において、Attention getting, memorability, selling powerというように分けて考察してきたが、広告中で見られるそれぞれの device はほとんどの場合いくつもの機能を兼ねて持っていることが分かり、あるひとつの device に1つの主要な機能を割り当てるという方法は適当でないことが分かってくる。 例えば分かりやすい例では、奇抜で印象的なキャッチフレーズは attention getting と memorability の両方の機能を持っているという例が挙げられる。よって、広告中のある device はいくつかの機能を兼ね備えていると考えるべきであるといえる。またその機能の有効な組み合わせによってより強力な宣伝効果を生み出しているものもあるとも考えられる。
ここまで、各機能に焦点を当てて考察してきたが、言語的要素、つまり、ことばの機能やわれわれの言語使用や言語活動に関する特徴によるdevicesの分析に特に注意が払われていた。これら言語的要素は重要であるが、非言語的要素は宣伝広告の効果を左右する影響力を持つのであるからしっかりととらえられるべきであろう。非言語的要素のうち心理的な影響については多少扱うことができたが、視覚的要素の与える影響については十分扱えていない。宣伝広告においてはむしろ非言語的要素が強く影響すると考えられる。特に複雑であるが非常に大きな影響を持つ視覚的要素の検討を残してしまったことは残念である。また、文化的・社会的背景の広告に与える影響など、さらに検討すべきものがひろがり、複雑ではあるが非常に興味深いテーマである。