On Language Acquisition
(言語習得に関して)

51期 II 類 M. I.

Chapter I Introduction

言語は人間にのみ与えられた特別な贈り物です。しかしながら、人間は生後まもなく言葉を話し出すのではなく、他の生物的機能と同じように徐々に言語を習得していきます。本論文の主なテーマは言語習得ですが、特に、言語習得における生得的なプログラムの有無に焦点を置いて考察していきます。

Chapter II Are There Stages in Language Acquisition?

言語習得には4つの段階があります。生後6ヶ月頃の The Babbling Stage(喃語期)、生後1年頃のThe Holophrastic Stage(一語期)、生後2年頃のThe Two-Word Stage(二語期)、そして、The Stage of Telegraphic Speech(電報的発話期)です。
 The Babbling Stage(喃語期)の特徴は、人間の言語音やそれ以外のさまざまな音を発する時期であること、難聴の子どもも普通の子どもと同じような音声を発することなどが挙げられます。また、子どもが言語音とそうでない音を区別するようになるのはこの時期です。
 The Holophrastic Stage(一語期)における子どもは音と意味が関係していることを理解するようになります。そして、概念や断定を表す1語のみを発します。1語文には3つの機能があります。動作や動作への欲求に関連していること、あるいは感情を表す語であること、あるいは名を指す語であることです。
 The Two-Word Stage(二語期)において、子どもは始め、1語期に発していた語を組み合わせて2語文を作りますが、最終的には実際の2語文を作るようになります。2語文の特徴は、数、人称、時制などの統語論的、形態論的な制約がないことが挙げられます。
The Stage of Telegraphic Speech(電報的発話期)において、子どもは発する語は3語、4語と増えていきます。そして実際の文のような文を作ります。その特徴は、"to"、"the"、"is"のような機能語がなく、内容語のみの発話であることです。それが電報の文体とよく似ているのです。子どもはこの時期からさまざまな文法事項も習得していきます。

Chapter III How do Human Beings Acquire Phonetic Sounds?

人間は喃語期を過ぎるとコミュニケーションに必要な音声のみを集中的に発達させていきます。しかし、その発達は継続的ではなく断続的です。その断続的な音声の分化について考察します。
 また、幼児は最初、世界のどの言語にも共通の音声のみを発し、後になってはじめて他言語とは異なる母国語特有の音素が表れるということについても述べていきます。
 さらに、イントネーションについても考察します。人間は喃語期において、発音は不完全ですが、すでに母国語特有のイントネーションを身につけています。

Chapter IV Is There a Critical Period in Language Acquisition?

臨界期とは、ある時期を過ぎると言語習得が極めて困難になってしまうその時期のことです。もし、臨界期が存在するのであれば、これが言語習得の生得的なプログラムの終点であると言えるのではないでしょうか。本章では、野生児や音のない環境で成長した子どもの事例、またその研究からの様々な仮説を踏まえて言語習得における臨界期の存在の有無について考察していきます。

Chapter V Conclusion

各章より、言語習得における生得的なプログラムは存在すると言えます。外部からそのプログラムを変えることはできません。しかしながら、もちろん、人間はひとりでは言語を習得することはできないのです。言語習得は、健全な環境、大人とのインタラクションや模倣、補強などの二次的作用があってこそ、正常になされるものなのです。言語習得において、生得的プログラムを達成するためには、他のさまざまな要素が必要とされるのです。