Comparison between Japanese Shame and Foreign Shame
(日本の恥と外国の恥の比較)

68期 AII 類 S. F.

Introduction

 私が初めて強く恥を感じたのは中学校の授業中である。私はこのとき先生の質問に対して、間違った回答をして周りに笑われるのではないかと思った。これまでの学校生活を振り返ると、このような場面は私だけでなく、多くの子どもが経験するものだと考えられる。特に、英語の授業では、普段あまり使わない言語を使うこと、人前で自己表現をする機会が多いことから、子どもたちは恥や恥ずかしさを感じやすい。恥をかくことは世間で生きていく以上避けられないが、過度の恥をかく体験は子どもたちの好奇心や学習へのモチベーションの低下に繋がる可能性があるため、学校生活において、子どもたちが恥を意識しすぎることなく、伸び伸びと学習できる環境を作るための工夫について考えたい。また、日本人はよく人目を気にすると言われるが、日本人と外国人の恥に対する考え方を比較し、日本人特有の価値観や文化についても考察する。

Chapter I

 第1章では、日本の恥と外国の恥とは何か考えた。まず、恥とshameの辞書上での意味を比較すると、定義に多少の違いはあるが、ほとんど同じ意味であった。次に、日本人の恥に対する考え方について3つの観点から考察した。1つ目は、懲りる・恥じる・慎むという日本人の行動パターンである。例えばある子どもが、してはいけない行動を悪いと知らずに行ってしまったとき、叱られたり、非難されることで罰を受ける(懲りる)、そして叱られることによって自分を恥じる、最終的に恥をかくような行動を避けるようになる(慎む)。日本ではこのような社会的しつけによって善悪やマナーを学ぶ。2つ目は、世間という日本独特のコミュニティである。人目を気にする日本人の行動基準は世間に悪く思われないか、非難されないかどうかである。世間に非難され、排除されてしまったら、日本人は生きていけないため、より強く他者の目を意識するようになるのである。3つ目は日本と外国のことわざに見る恥の捉え方の違いである。恥に関することわざは日本語にも外国語にもあるが、比較してみるとやはり、日本人は他人にどう思われるかを気にしやすいということが分かった。他に、日本と西欧の文化の違いを、恥の文化と罪の文化と捉え、何が思考や行動の基準となるのかについても考察した。

Chapter II

 第2章では、日本人と外国人が何を恥ずかしいと感じ、恥と捉えるのか調べるためにアンケート調査を行った。回答者は日本人とアジアやヨーロッパ出身の外国人で、学校生活で恥を感じたことがあるか、今までに人目が気になった経験があるか、恥と聞いて思い浮かべることは何かを尋ねた。また、それぞれの質問の回答に対して、回答者がなぜそう思ったのかについても回答してもらった。集計の結果、日本人は自分の行動が周囲の注意を引いたり、他者に注目されることを恥ずかしいと感じる傾向があることが分かった。一方、外国人は人に馬鹿にされるなど、自分の能力を疑われると恥ずかしいと感じるようだ。

Chapter III

 第3章では、第1章・第2章で考えた日本人の恥への考え方やアンケート調査の結果を教育に活かすための工夫について述べた。日本人は人目を気にして行動するため、外国人から消極的だと思われることもあるが、無理に外国人のように振る舞う必要はない。日本では謙虚であることは昔から美徳とされてきたし、それが日本の文化であるからだ。子どもたちが日本の文化を否定することなく、かつ積極的に学習するためには、失敗したときに温かく受け入れられる環境を作ることが重要である。もし、子どもが失敗したときに先生に考えを否定されたり、周りに笑われたら、挑戦しようという気持ちはなくなってしまうだろう。他者の目に特に敏感である子どもたちのために、教師としてできる配慮は子どもの考えを尊重すること、成功か失敗かに関わらず、子どもの挑戦を褒めることだ。英語の授業に特化して考えると、発表の授業の前には子どもたちに十分に練習時間を与え、自信を持って発表させる、発表の後は何が良かったか教師や他の子どもたちが褒めるなどの工夫ができる。

Conclusion

 日本の恥と外国の恥について考えてきたが、ここで得た物を教育や生活に活かすために、より広い視野を持って研究し続けたい。今回行った調査結果は限られた回答者によるものであり、回答者の年齢層を広げたり、調査対象を様々な国の人に広げれば結果も変わってくるだろう。また、この論文でことわざをいくつか扱ったが、それぞれがその国の文化や根底にある考え方を表しており、興味深いものであった。日本のことわざと同様に、世界のことわざについても深く調べると新しい発見があるだろう。子どもたちに安心を与える工夫については、自分も相手も恥の文化を持っていることを意識しながら、子どもたちと関わる中でこれからより多くの工夫を見つけていきたい。