A Study of Lifestyle of Nordic People and Minimalist
(北欧の人々とミニマリストのライフスタイルについての研究)

68期 AII 類 A. N.

Introduction

 私は大学生活の間に、北欧の人々とミニマリストのライフスタイルに出会い、それらは自分自身の暮らしに対する見方を変えた。日本では2010年代にこの二つのライフスタイルが広く知られるようになったが、私は北欧の人々とミニマリストのライフスタイルには共通点や、日本人が惹かれる文化的な背景があるのではないだろうかと考えた。そこで私は北欧の人々とミニマリストのライフスタイルについて考察すると同時に、これからの日本で幸せに暮らす方法を探っていきたいと思う。

Chapter 1 Life in the Nordic countries

 第一章では、北欧の人々ライフスタイルの特徴を、国連の世界幸福度調査のデータの分析をもとに述べた。北欧諸国のほとんどが、国連が毎年発表する世界幸福度ランキングのトップ10を占めている。このランキングは、各国の国民に自分の幸福度は0から10のどの段階にあるかを答える世論調査によって得られた数値の平均値から出されている。北欧諸国は充実した社会福祉システムで有名であるが、それは住民たちが安心感、幸福感、自由さを感じながら暮らすことを可能にしていると考えられる。一方、2019年のランキングにおいて58位であった日本は高い税金を負担する北欧諸国の人々に比べ、自由に使うことのできるお金は多く、物質的に豊かであるはずなのに、幸福度が高くないという実情から見えるのは、北欧の人々にとっての幸福な状態とは、物質的に裕福であるということよりも、精神的・経験的に満足しているということなのではないだろうか。北欧の人々が精神的・経験的な充足感を大切にしているということは、デンマーク独自の「ヒュッゲ(人と人とのふれあいから生まれる温かな居心地の良い雰囲気や、そのひととき)」という習慣や、長く厳しい冬の間、家の中で暮らす時間が長い北欧の人々が、暮らしを豊かにするために発展させてきたシンプルで機能的な家具のデザインなどに見受けられる。

Chapter 2 Life of Minimalist

 第二章では、ミニマリストと呼ばれる人々のライフスタイルについて述べた。本論文におけるミニマリストとは、必要最小限のモノやコトと共に生活する人のことを指し、2009年ごろからアメリカで有名になった。日本では2010年代以降ミニマリストに関連する書籍が多く発売されたり、2015年には新語・流行語大賞にノミネートされたりして、広く知られるようになったが、その背景には3つの要因があると考えた。一つ目に「増えすぎたモノと情報」、二つ目に「モノを多く持たずに済むための、モノやサービスの普及」、三つ目に「東日本大震災をはじめとする、頻発する自然災害」をあげた。ミニマリストにはルールはなく、最も大切なことは、自分にとって必要なモノやコトは何かを考え、無駄なものをなくしていくということであると考える。

Chapter 3 Relationship between Lifestyle of Nordic People and Minimalist

 第三章では、北欧の人々とミニマリストのライフスタイルの共通点や、日本人がこれらの暮らしに惹かれる理由を考察した。北欧の人々とミニマリストは、どちらもシンプルな生活を自ら選んで送っていたり、物質的な豊かさよりも、精神的・経験的な満足感を大切にしたりする傾向がある。また、日本の文化、歴史、住環境、国民性、そして精神性などが、日本人が北欧の人々やミニマリストのライフスタイルに自然と惹かれる理由に関係するのではないかと考えた。例えば、茶道では装飾の少ない四畳半の小さな茶室の中で、必要最小限の所作で茶を点てることで美を表現したり、「もったいない」という言葉に表されるように、日本人は森羅万象に神が宿ると考え、ものを慈しみ大事に扱ったりするということなどが例に挙げられるだろう。北欧の人々とミニマリストのライフスタイルに共通する、「足るを知る」ということを理解すれば、日々の生活に対する見方が少し変わるかもしれない。

Conclusion

 第一章から第三章にかけて、北欧の人々とミニマリストのライフスタイル、それらと日本人の関係性などについて考察してきた。2010年代にこれらのライフスタイルは日本で有名になったが、これは一時的なブームに過ぎず、様々な問題に溢れ不安が止まない現代の日本でも幸せに暮らすための大切な示唆をこれからも与えてくれるだろうと考える。また、自分自身も北欧の人々とミニマリストのライフスタイルを研究する中で知った、「足るを知る」ということを、日々の生活の中で意識して行動していきたいと思う。