The Role of Non-verbal Communication
(非言語コミュニケーションの役割)

67期 AI 類 A. M.

Introduction

 非言語コミュニケーションとは、コミュニケーションのうち、言語以外で伝達される方法のことである。言語以外というのは、つまり、身ぶり、表情、声のトーンなどの事を指す。我々人間は、非言語コミュニケーションと言語コミュニケーションの両方を駆使してあらゆる意思を発信してきた。また「目は口ほどにものをいう」「目は心の窓」という諺があるように、非言語の側面は重要視されてきた。
 急速な国際化が進む社会の中で、現在日本では英語を身に付けることは重要とされている。学校現場では外国語の必修化が進められ、就職や進学の場面においても英語のテストを合否の判断材料にされることがますます増えている。しかしそれは主に言語の面にフォーカスが当てられている。コミュニケーションは人と人とのやりとりであるので、言語の面に限らず非言語の側面にも重きをおかなければならないのではないかと感じている。非言語コミュニケーション研究の権威者であるBirdwhistellによると、コミュニケーションの中では非言語の部分が約70%を占めるという。それにも関わらず、非言語コミュニケーションの明確な解説書や辞書は無い。この論文では、非言語の役割を明らかにし、その背景の文化まで考えていきたい。

Chapter I

 第1章では、非言語の中でも最も重要だと考えられる顔の表情に着目した。顔はその時の感情だけでなく、その人の性格や、これまでの生き方も反映する。私たちは普段、人の表情によく注意を払っている。同じ文化圏で育った人物の感情を判断するのには、言語の部分が無くてもそう難しくはない。さらにあらゆる人種は顔にそれぞれ特徴を持っている。そのため、同じ人種ならばより表情の判断がしやすいのである。そこで、異文化で育った人の感情を読み取るのにどのような判断基準を持ち合わせて我々は判断しているのか、という疑問が生じた。

Chapter II

 第2章では、前章で生じた疑問を解決するため、独自のアンケート調査を行った。回答者にタイ人の男性の表情を6種類提示し、9つの選択肢から、ふさわしいものを一つ選んでもらうというものだ。回答者は、日本で生まれ育った10代から50代の人である。集計の結果、「イライラ」「恐怖」「興奮」「混乱」「退屈」「恥」の表情のうち、唯一「恐怖」の表情において、誤答率が正答率を上回った。考察の結果、日本人が「恐怖」の表情を正しく判断できないのは、自ら「恐怖」の表情をすることが少ない、もしくは普段の生活の中で「恐怖」の顔を見ることが少ない、つまり、本当の意味での「恐怖」の表情をすることがない環境にいるからではないかという結論に至った。

Chapter III

 第3章では、一つの文化集団の中で出来た象徴の身近な例である化粧を取り上げ、日本人の国民性との関連を考察した。日本の社会の中では、化粧をする根本には「他者を意識する」という目的が前面に押し出されている。皆が同じリクルートスーツを着用し、就活メイクまで施す、日本の就活がその良い例である。この慣習が続いているのはなぜか。それは、日本人の「帰属意識」に基づいているのだと考える。ひとくくりの「就活生」の中に同属意識をもち、自ら溶け込むことによって、「常識外れではない」という安心感を得ているのである。この帰属意識は「就活」の例にとどまらず、日本人の性質の一つだと考えられる。「出る杭は打たれる」「郷に入っては郷に従え」といってことわざがあるように、集団において「何者でもない」自分になり、「同属であるというアイデンティティ」を主張することで、自己を確立できているのである。

Conclusion

 非言語コミュニケーションについて様々な視点から考察したが、これからの時代に求められる非言語コミュニケーションに関するさらなる研究が行われるべきである。第2章においては、同じアジア民族であるタイ人の男性の写真を用いて調査を行ったが、全く異なる大陸の民族の写真を使って調査をすればまた違った結果になったと感じる。さらに、解答者の世代や性別によってばらつきがあるのかどうかを調査してみると、新たな発見があると考える。また、第三章の化粧と国民性の関連についての研究は、異文化理解の分野にとって価値があるはずだ。