Comparison between Broadway Musical and Japanese Musical
(ブロードウェイミュージカルと日本のミュージカルの比較)

67期 AI 類 R. M.

Introduction

 私が初めて見たミュージカルは『美女と野獣』である。それから私は色々な舞台を鑑賞する機会に恵まれ、ミュージカルが大好きになった。しかし日本人の中には、突然歌い出したり、様々な感情を歌で表現したりすることについていけないと思う人や、敷居が高そうでとっつきにくいと感じている人も少なくない。ミュージカルとオペラを同じ類のものと思っている人も多く、チケットが高い、つまらなさそう、といったイメージも拭えない。そこで私はブロードウェイミュージカルと日本のミュージカルの比較から、ミュージカルの魅力を探っていきたいと考える。

Chapter 1 Characteristics of Broadway Musical and Japanese Musical

 Chapter 1ではミュージカルの歴史や劇場の造り、公演システムの違いを比較しながら、ブロードウェイミュージカルと日本のミュージカルの特徴について明らかにした。また、日本オリジナルのミュージカルを研究し、外国とのつながりについて考えた。
 アメリカ、ブロードウェイで本格的なストーリーを持つミュージカルが最初に上演されたのは1927年である。日本で最初にミュージカルが行われたのは1951年である。日本は第二次世界大戦後にブロードウェイのミュージカルを輸入したのであり、歴史においても、公演システムにおいてもブロードウェイミュージカルに届くものではない。しかし、日本の劇場は新しいがゆえに清潔で綺麗であり、冷暖房が完備され、快適で豪華な空間を作り出している。さらに、日本オリジナルのミュージカルは想像以上に世界に進出している。今回は「宝塚歌劇団」「ジャニーズミュージカル」「2.5次元ミュージカル」の3つを扱ったが、どれも世界へと日本の魅力や文化、エンターテインメントを世界に発信する重要な役割を担っていると考える。実際に海外での公演も成功させている。
 ブロードウェイミュージカルと日本のミュージカルは単に古い・新しいという違いだけではないことが分かった。どちらにもメリットがあり、その国の人々に合ったものになっているのである。

Chapter 2 Comparison between Broadway version and Japanese version of My Fair Lady

 Chapter 2では、My Fair Ladyという作品のブロードウェイ版と日本版を、歌詞と内容の観点から比較・分析した。My Fair Ladyは、ブロードウェイでは1956年、日本では1963年に初演された超名作ミュージカルである。
 歌詞の観点からは劇中歌の1つである "The Rain in Spain"の歌詞を比較した。英語では "The rain in Spain stays mainly in the plain"と韻を踏むかのように同じ音が繰り返されている。ロンドンの下町訛りによって「ai(エイ)」をうまく発音できないことにうまくかかっている。これを日本語にそのまま翻訳しても、ブロードウェイ版の音の楽しさや主人公の発音がどのように変わっていったのか分からない。そこで2013年、翻訳・訳詞を担当したG2によって「江戸弁」へと改変された。もとの英語詞とはずいぶんと違う歌詞になったが、江戸っ子が「ひ」と「し」の発音を入れ替えることを上手く利用して、美しい話し方ができるように指導する場面に合っていると考える。
 内容の観点からはヒロインの描き方を比較した。どちらも「女性の自立」を描いている点で共通しており、この時代の男女差別を風刺し、言葉一つで女性が自分らしく歩いていける様を歌とダンスに乗せて美しく表現している。このミュージカルを単なるシンデレラストーリーと思って初めて見る人にとっては、ラストシーンは歯切れの悪い終わり方に思えるだろう。しかし、単なるラブロマンスではないからこそ、あのラストシーンはイライザとヒギンズ教授の成長とこれからを示唆している。観客は見終わった後に2人のこれからを自由に想像することができる。と同時に、言葉の大切さ、言葉が階級をも超えていく力を持っていることに夢を抱けるだろう。

Chapter 3 Japanese and Musical

 Chapter 3ではなぜ日本人はミュージカルが苦手なのか、そしてミュージカルが苦手な人たちを少しでも減らすためにはどうしたらいいかについて考察した。
 ミュージカル嫌いの代表者であるタモリさんは、@会話している人間が急に歌い出すのは不自然である、A死にかけている人間が歌うのも生理的についていけない、Bミュージカルと言うと、日本人のくせにアメリカ人みたいな顔をするのが許せない、と言っている。日本の歴史や習慣の中にミュージカルはなく、なかなか受け入れられないのである。また、ミュージカルを苦手とする人の中には2つのタイプがある。@ミュージカル食わず嫌い、Aミュージカルを食ってみたが、受け付けない、である。私は@ミュージカル食わず嫌い、を少しでも少なくするために2つのことを提案する。
 1つ目はロングラン公演を導入する、または地方で公演数を増やすことである。長期公演・地方公演を行えば観劇できる人が増える。しかし、長期公演を行うためには1つの劇場を長期間貸し切らなければならない。そこで、劇団が専用劇場を持つことでロングラン公演が可能になるのではないだろうか。2つ目は教育現場でミュージカルに触れさせる機会を作ることである。修学旅行や社会見学で観劇したり、学校にミュージカルを呼び公演をしてもらったりすることで、子どもたちは自分の目で耳でミュージカルを体験することができる。それも不可能なら、授業の中でミュージカルを教科横断的に活用する方法を提案する。ミュージカルはたくさんの要素を含んでいる。1つの作品を扱えば、国語・社会・音楽・体育・外国語活動など、様々な教科と関連付けながら授業ができる。そしてなんといっても子どもたちの表現の幅を広げることにつながるのではないだろうか。

Conclusion

 第1章から第3章にかけてブロードウェイミュージカルと日本のミュージカルを比較してきた。長い歴史を持つブロードウェイミュージカル、最新の設備や演出を取り入れた日本のミュージカル、どちらも素晴らしく、奥が深いことが分かった。昔からロングランヒットを続けている作品がこれからもたくさんの俳優さんによって演じられ、大勢の人の心に残る作品として公演され続けてほしいと考える。また、ミュージカルの楽しさやおもしろさを子どもたちに伝えていきたい。