A Study of Languages and Cultures of Canada
(カナダの言語と文化の研究)

65期 AII 類 M. K.

Introduction

 カナダという国の名前を聞くと、多くの人は北アメリカ大陸の国だとか、自然豊かな国だというイメージを抱くのではないだろうか。しかし、カナダ、トロントでの9ヶ月の留学経験はそのイメージを大きく変えた。異なる背景、母語、文化を持った人々が皆、他人には干渉せず、思うがまま共生している国、つまり多文化、多言語の多様性に溢れた国だということが分かった。その現状が生まれた背景はなんなのか。現状とその歴史的背景、そしてカナダ英語について分析をし、カナダという国について、また、カナダにて多様性が存在している理由について理解を深めることが本論文の目的である。

Chapter 1 lLinguistic Diversity of Canada

 第1章では、カナダの言語的現状についてStatistics Canada(4年ごとに行われている統計調査)のデータを元に分析をした。カナダでは今現在200をこえる数の言語が話されている。大きく分けると、英語、フランス語の二つの公用語に加え、移民言語そして原住民の言語の4種類である。2016年現在、カナダの人口は約3500万人、そのうち母語が移民言語である人は22.3%、フランス語は21.4%と公用語であるフランス語を移民言語が上回るという結果であり、カナダにおける移民の影響力の大きさ、そして言語の多様性がうかがえる。また、フランス語を母語とする人のおおよそ90%がケベック州に住んでいるなど、地域差も大きいことが分かった。
 英語とフランス語がカナダでは公用語として指定されており、街中で見かけるほとんどのものが二言語表記されている。しかしながら、多くのカナダ国民は二言語ともを話すことができるわけではなく、あくまでも制度上の公用語であることが分かった。770万人、22.3%を占める移民の人々であるが、その中でも中国の人々の影響力は大きく、さらにその中国系移民のうち74%がバンクーバーもしくはトロントという大きい都市に住んでいることが明らかになった。原住民の人々については、人口は増え続けているもののInuitを除く原住民の多くは原住民の言葉を話すことはできない、これは都市への進出から英語やフランス語を使う頻度が増え、原住民の言葉を話す必要性がなくなってきているという状況が影響していると言えるだろう。

Chapter 2 How People Brought and Spread Languages to Canada>

 第2章では、今現在の多様性が生まれるまでにどのような歴史的背景が存在していたのかを時間軸に沿って以下の4つの区分に分けて述べた。

  1. The aboriginal and colonial period
  2. The United Empire Loyalists' moving period
  3. The British settlements period
  4. The multi-ethnic language period
カナダはかつてフランス、そしてイギリスの支配下にあったこともあり、今現在その二言語が根強く残っていることや、移民を多く受け入れながら発展を続けてきた国であるということが分かった。

Chapter 3 Characteristics of Canadian English

 第3章では、多様性が溢れるカナダにおいて、公用語として広く使用されるカナダ英語の特徴について特に語彙について焦点を当てて考察した。カナダ英語は単純にアメリカ英語とイギリス英語を混ぜ合わせたものではなく、それら二種類の英語に加え、フランス語、原住民の言語からの借用、そして文化と共に発展した独自の表現であるCanadianismの5種類が合わさって成り立っていることが分かった。
 カナダでは、英語がlingua franca的位置付けとして人々の間で使用されており、英語を母語としない移民の人々がコミュニケーションのツールとして思い思いの英語を話している。ここでは、文法や発音が間違っていようとも会話として成立すれば人々は細かいことは気にしない。また、カナダにおける移民に対する寛容性がこの状況を生む一助になっているとも言えるだろう。カナダに留学に来ていたメキシコ人学生は、アメリカでは差別を受けるからあえてカナダに来たと言い、ブラジル人学生は自分の国で仕事を得ることが難しいのであえて移民に対して寛容なカナダに来ることで職を得ようと考えていると言う。このように、他の国の情勢、状況に影響を受けながらカナダという国における多様性が存在しているのである。

Conclusion

 第1章?第3章と現状、歴史、そしてカナダ英語の特徴と述べてきたが、植民地化からスタートしたカナダは他の国、多方面から大きく影響を受けて成長をしてきた国であり、最近では、カナダという国の寛容さがそれを実現させていることが分かった。反対に現在カナダ人としてのアイデンティティ問題が浮上してきている。さらなる研究として、多文化多言語のethnic countryであるからこその問題点について調べていければ良いと考える。