A Study of American Heroes
(アメリカンヒーローの研究)

63期 AII 類 M. W.

Introduction

  アメリカにはヒーロー崇拝熱があり、多くのアメリカ国民が多様なヒーローたちに魅了されてきた。しかし、そうしたヒーローたちのイメージは時代によって変化するものである。私はアメリカ国民の精神に関心があり、時代とともに変わるヒーロー像を研究することによって、その時代ごとのアメリカ国民がどのような精神状態にあり、何を望むのかを明らかにしようと試みた。この論文では、主にアメリカの映画に登場するヒーローの特徴の変化を分析した。

Chapter 1 Conditions of American Heroes

 アメリカでヒーローと呼ばれ、国民から崇拝されるにはある条件を満たす必要がある。それらの条件を大きく分類すると、一般的な条件と現代における条件に分けられる。まず、一般的な条件として挙げられるのが肉体的、精神的強さである。一般的に、ヒーローは肉体的、精神的に非常に優れており、アメリカ国民に明るい未来のヴィジョンを与えられるような行動力や野心を持ち合わせる。例えば、アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンは政治家としても軍人としても優秀で、彼のリーダーシップは国民の心を掴んでいる。そして、現代におけるヒーローとしての条件に挙げられるのが、人間味があるということである。現代においては、普通の人間がするようにヒーローたちにも人間らしい悩みを持つことが求められており、ただ単純に肉体や精神の優れたヒーローではヒーローに成り得ないのである。例えば、アメリカの映画The Dark Knightおいて、主人公のバットマンは人々を守るためにどのようにしたらよいかという真のヒーロー像を求め、葛藤する。

Chapter 2 Why Do Americans Love Heroes?

 アメリカは多くの移民からできている国であり、それらの移民は元々異なった文化や慣習を持っていた。そういった移民の集まりでできた国であるため、彼らは彼らがアメリカ人であるというシンボルを欲した。そのようなアメリカ国民が求めた明確なシンボルの役割をヒーローが果たしたのだ。また、歴史の浅いアメリカは神話を持っておらず、アメリカ国民はヒーローを神話化した。そうすることによって、ヒーローはアメリカ国民にとって、アメリカ人としてどのように考え、行動するかを明示してくれる理想的なシンボルとなったのだろう。

Chapter 3 Characteristics of American Heroes in Films

 ここでは、アメリカ愛国主義の象徴である映画スーパーマンシリーズを取り上げ、作品によってスーパーマンの特徴がどのように変化していき、アメリカ人がその時代ごとに望んでいたものを分析した。
 初めのスーパーマンシリーズでは、スーパーマンは万人にとって完璧な存在であった。常に正義の味方であり、世界や人々を悪から守るという役割をこなして見せた。彼は肉体的にも精神的にも超人的であり、社会的モラルも守る、まさにアメリカ人の理想的なシンボルとなった。こういった彼の特徴は、アメリカの当時の時代背景から来ている。初めのスーパーマンシリーズが公開されていたのが、1980年辺りである。当時のアメリカはヴェトナム戦争、ウォーターゲート事件、冷戦を経験していた。そうした出来事がある中、アメリカ国民は前向きな思考を望んでおり、アメリカこそが世界をリードする国であるという考えを完璧な存在であるスーパーマンから受け取っていたのだろう。
 2006年、2013年にそれぞれ公開されたSuperman ReturnsMan of Steelにおいては、スーパーマンの特徴は大きく変わっており、彼は悩みを抱えるようになる。彼だけの持つ特別な力にも懐疑的な視点が向けられており、彼は悪を倒し人々を救うことにも悪戦苦闘する。初めのシリーズと比べると複眼的な見方がされているのである。これらが公開された頃までに、アメリカは同時多発テロを経験している。また、現代においては、1980年辺りほどアメリカが世界一と明確に言える状況ではなくなってきた。中国やロシアも経済成長を遂げ、複雑な世界情勢になっているのだ。そうした環境において、アメリカ人は単純な強さよりも、彼らと同じように悩む一般的な人間の魅力があるヒーローを望み始めたのだろう。