A Study of Onomatopoeia in English
(英語におけるオノマトピア)

62期 AII 類 A. Y.

Introduction

 この論文では英語圏におけるonomatopoeiaとはどういったものなのかを考える。そもそも英語圏でのonomatopoeiaの定義は"the use of words that sound like the thing that they are describing"(Longman Dictionary of Contemporary English)とされているように、音の模倣を意味している。日本でのオノマトペとはずいぶん違うようである。そこで、本や映画、漫画、絵本など様々な媒体から集めた英語圏のonomatopoeiaを次の章で取り扱う。

Chapter 1 Analysis of English Onomatopoeia

 英語圏のonomatopoeiaにおいて、最もわかりやすい例は動物の泣き声である(例えば、"bow-wow" や"quack"のような)。また、その他のonomatopoeiaに分類される例は、実際に音がする事象を表している単語がほとんどだ。たとえば、衝突音を表す"crash", "clink", "clunk", " clonk"などがその例にあげられる。また、これらはすべて衝突音を表すが、それぞれが模倣している音は異なる。表す音の違いが単語にでている可能性もある。そこで、実際の音と単語を発音する際の音との関係性(音象徴)についてはChapter 3で扱う。
 英語のonomatopoeiaにおいて、最も大切なことはonomatopoeiaとして認識されている単語が英語の語彙体系の一部として機能しているということである。例えば、アヒルの泣き声を表す "quack"という単語を辞書で引いてみると、動詞と名詞としての意味がすぐさまにでてくる。そして、名詞として使用された場合、必ずその単語は文中で単数形か複数形かが明確にわからなくてはならない。つまり、単数形ならば、冠詞と共に用いられ、複数形ならば、複数を表す"s"と共に用いられなければならない。このように、語彙項目として英語の文法規則に従うのである。このことを「語彙化」と言い、英語のonomatopoeia特有の特徴である。逆に言えば、音の模倣を表しているものでも、語彙化されていなければ、それはonomatopoeiaに分類されない。例えば、眠っている様子を表す"ZZZZ"という表現はonomatopoeiaとはされない。だが、もしこれが "ZZZZed" や "ZZZZing"のように過去形や進行形として用いられるようになれば、それはすでに語彙化しており、onomatopoeiaとなったといえるであろう。そうでなければ、このような表現は実際の音を模しただけの文字の集合体にすぎない。

Chapter 2 Analysis of Japanese Onomatopoeia

 日本のオノマトペは、モーラを基準として、主に1モーラないし2モーラを基本形とする。(例えば、「ふ」、「つ」、「ぐい」、「ぱん」等がそうである。)そして、これらの基本形に促音、撥音及び「り」を伴うことができる。また、反復も日本のオノマトペでよく見られる例である。促音、撥音、「り」を伴うことによってもたらされる意味はそれぞれ違う。たとえば、「ごろ」というものが転がる様子を表すオノマトペについて言えば、促音と伴い、「ごろっ」というオノマトペになると、「瞬間」「俊敏さ」また、「急な停止」を表す。撥音を伴い、「ごろん」になると、「共鳴」を表す。さらに、「り」を伴い、「ごろり」になると、「ゆったりさ」や「完了」を表す。このように、それぞれが特有の意味を表している。

Chapter 3 Comparisons between English Onomatopoeia and Japanese one

 英語圏のonomatopoeiaと日本のオノマトペを比較してみると、共通点は少ない。まず、品詞についてだが、英語圏のonomatopoeia が動詞と名詞に限られているのに対して日本のオノマトペは動詞、名詞、副詞、形容詞として機能するように、使用の幅が非常に広い。そして、日本ではオノマトペとして他の語に対して独立しているが、英語圏のonomatopoeiaは前に述べたように、英語の語彙体系の一部として機能しているため、それ特有の特徴というものが少ない。また、英語には擬音語という概念が存在しない。よって、動詞を詳しく説明する際には、副詞("slowly"など)を用いるか、違う単語を用いる。("smile"や"chuckle"、"grin"など)
 onomatopoeiaと音象徴の関係性については、感覚的なものであるため、明確な根拠がない。しかし、"rap"や"tap"の単語が表す音の高さと"r"と"t"の音の違いとの関係や、"glitter"、"gleam"、 "glint"、 "glisten"、"glow"のもつ意味と"gl"の音が表す意味との関係性はないとは言えなさそうである。