Sense of Humor in American Jokes
(アメリカン・ジョークにおけるユーモア)

62期 AII 類 S. O.

Introduction

 「笑い」は人間関係を円滑にする。ジョークはその「笑い」を生み出すものの一つである。ジョークとは概して物事を違った角度から見ることにより、一般的な考えとのギャップを生み、そのギャップが笑いを生じさせる。どの時代でも、またどこの国でも、人のある所には必ずジョークが存在する。この論文では、日本を始めとするアジア圏の国に比べ、知的でさっぱりとした傾向にあるアメリカのジョークについて論ずる。ジョークは人を楽しませるものであるが、一方で特定の人物を攻撃し傷つける側面も持ち合わせる。この論文では、ジョークが生み出す面白さや笑いについて研究すると共に、ジョークの機能について調べ、研究する。

Chapter 1 Features of Typical American Jokes

 第1章では、よく見られるアメリカン・ジョークの特徴とパターンを紹介する。ジョークがもたらす笑いは、知的な喜びによるものである。一般的な考えとはずれた意外な考えを提示し、その新鮮さや説得性が聞き手に知的発見をもたらし、喜びを与え、笑いを生み出す。つまり、ジョークは知的な要素が入っていなければならない。殆どのジョークにはその要となる落ち(Punch Line) が存在する。たとえば、言葉遊びや洒落、誇張表現や不幸な結末、聞き手の予想を裏切るもの等がある。また、ジョークはいくつか決まった形を取り、定型化されているものがある。それ以外にも会話形式や小咄といったパターンもある。ジョークは、前述したような落ちと形式の組み合わせにより構成されており、様々なタイプのものが作られている。

Chapter 2 Wit and Sense of Humor in Everyday Conversation

 アメリカの映画では、しばしば登場人物がジョークを飛ばす姿が見られる。単に言葉遊びで楽しむこともあれば、ジョークの笑いを共有することで不仲だった人々の距離が縮められることもある。また、本来ジョークを言うべきではない緊迫した場面でのジョークは、緊張を崩し、その安堵が笑いを生む。その場の状況に応じたジョークを言うことは機転が必要であり、人物のSense of Humor が現れる。

Chapter 3 Black Humor and Victims

3.1 Victims of Black Humor
 第1-2章では人を楽しませるジョークを紹介したが、ジョークの中には攻撃性を持つものもある。それらのジョークはある特定の人物に対する嫉妬ややっかみ、怒り等の感情から生まれる。それらはしばしばBlack humor と呼ばれ、様々な攻撃の対象(Victims)が存在する。特にVictims に仕立て上げられることが多いのが政治家・医者・弁護士である。これらの職業はアメリカにおいて富と権力を持つ成功者である。そのため、庶民の嫉妬心が彼らをVictims にしたジョークを生み出し、彼らを嘲笑することで鬱積した気持ちを発散していると考えられる。また、国民性ジョークによく見られるような、他者(主に弱者)を貶めるものもある。これは他者より優位でありたいという人間の本能から生まれると考えられる。

3.2 A Satire
 また人物だけではなく制度や状況も風刺(Satire)として攻撃の対象となることがある。過去にアメリカにおいて過度に消費者を保護するPL法を揶揄したジョークが作られた。このようなジョークは、直接的には誰かを攻撃していないものの、理不尽な制度や状況を作り上げた人間が存在することは明らかであり、そういった人物を暗に攻撃していると考えられる。制度や状況などは、個人の力では太刀打ちできないものが殆どであり、それらに対する不満や怒りを、暴力等ではなく知的な笑いに包み昇華させているのだろう。

3.3 Self-deprecating Humor
 自分を犠牲者にするいわゆる「自虐」(Self-deprecating Humor)は、他者を傷つけずに笑いを誘うものである。自身の欠点や不幸を笑うことは、自らを客観視し自己認識を高めるということである。また精神的なゆとりがなければ自らを笑うことは出来ないため、成熟した精神から生まれる高度なジョークである。

Conclusion

 ジョークには、
(1)人間関係を円滑にする
(2)優越感に浸りたい欲求を満足させる
(3)不満や怒りを昇華させる
(4)社会の不正を糾弾する
(5)自己認識を高める
といった機能がある。ジョークはただ単に楽しむだけのものではなく、人間の精神安定を図る上で重要な機能を果すものであり、我々にとってなくてはならないものである。