A Study of Cultural Comparison between American and Japanese Advertisement
( アメリカと日本の広告における文化の比較)

60期 AII 類 N. T.

Introduction

広告は消費者に向けて作られているため、ある国の広告を見れば国民の特徴が分かり、文化について知る手掛かりとなる。アメリカと日本の広告を比較することで、両国の文化の特徴について分析する。この研究を異文化理解のための手段とすることが目的である。

Chapter 1 To Research Advertisement from a Variety of Angles

Chapter 1では、消費者の購買意欲を高めるために、広告がどのような手法を用いているかを、実際に使用された広告を例に紹介する。日本とアメリカの広告を比較し、それらの文化の特徴について説明する。日本では、第一に、イメージ戦略を重視し、芸能人を広告に起用するケースが多い。イメージを重視するために具体的な説明をすることはあまり無い。これとは対照的に、アメリカでは明確な表現を重視し、説明口調になったり、数字を多用したりする広告が多い。第二に、時のとらえ方にも違いがある。日本人は広告に同じ構成を何度も使用するように永続性を好むが、アメリカ人は変化を好み、すぐに新しいことを思いついたら実行する。第三に、日本社会は集団意識によって構成されているが、アメリカ社会は個人主義によって成り立っている。そのため、日本人では憚られるような比較・挑発型の広告がアメリカには多い。また、日本人は事象を全体的・抽象的にとらえる傾向があるが、これとは反対にアメリカ人は断片的・具体的にとらえる傾向があるようだ。これらの広告の表現方法は、情報のほとんどが身体的コンテクストや個人に内在されている高コンテクスト文化に日本が属しており、情報の大半が明白にコード化されている低コンテクスト文化にアメリカが属していることと関係している。

Chapter 2 Changing Advertisement

Chapter 1で紹介したのはアメリカと日本の典型的な広告の例だが、時代と共に広告は変化しつつある。Chapter 2では最近の傾向について紹介する。第一に、アメリカでは日本のようなイメージを使用した広告が増加している。商品の説明をほとんどせず、映像でメッセージを伝える広告や、芸能人を起用する広告にアメリカ人の注目が集まっている。しかし、日本のものと比べると露骨な表現や否定的な表現をしているものが多い。また、ある事項を日常慣れ親しんだ連関からずらすことによって、見慣れぬものにする「異化作用」を用いるイメージ広告がほとんどである。第二に、日本でアメリカのような比較・挑発型の広告が増えている。日本人の集団意識からタブーとされてきたこの手法であるが、日本人にとっては新鮮に感じるのかもしれない。第三に、日本でストーリー性のあるCMが増えている。ストーリーは商品とはほとんど関係が無いものが多いが、ストーリーの展開は消費者を惹きつけ、話題を呼んでいる。日本人にとって話題性と購買意欲は切り離せない。第四に、日本のCMに出演するハリウッド俳優が増えている。海外では芸能人がCMに出演することは金儲けのためであり、CMに出演する芸能人は落ち目であるという否定的な考え方が根付いているが、日本は例外である。豪華なハリウッド俳優がCMに出演し、あえて三枚目の役をすることで、日本人は彼らに親近感を抱くようだ。

Chapter 3 Survey

日本人21名、外国人21名(中国人、ドイツ人、アメリカ人、韓国人、スゥエーデン人、フランス人、トルクメニスタン人、インドネシア人)に広告に関するアンケートを行い、異文化を持つ人々が実際にChapter 1・2で述べたような異なるコミュニケーションスタイルを持っているのかどうかを試す。結果としては、予想通り、日本、中国、韓国などの高コンテクスト文化に属している国民は芸能人が起用されているイメージ広告を好み、アメリカ人を代表とする低コンテクスト文化に属している国民は芸能人を起用したイメージ広告に左右されないことが分かった。また、日本の広告は過度に美しく見せたり、効果音を多用したりするため、大仰すぎる印象を受ける外国人もいるようだ。予想外だったことは、この調査でアメリカ人やヨーロッパ人は比較・挑発型の広告を好む傾向があったが、これらのタイプの広告にユーモアを見出す日本人がいたことである。アンケートの最後には高コンテクストで異化作用を用いた広告が読み取れるかを試したが、日本人に正解率が多かった。日本人はやはりイメージから文脈をとらえることに長けているようである。

Conclusion

広告はメッセージを伝える媒介であり、間接的コミュニケーションのための手段である。ところが、伝え方は自己意識、空間意識、思考過程、価値観などによって構成される文化によって違ってくる。日本人は和の精神が根付いた相互依存的な世界で生活しているため、全体像や抽象的な概念をとらえることに長けており、間接的表現をする傾向がある。一方、アメリカは個人主義社会であり、自己表現をすることが生きるために不可欠である。そのため、アメリカ人は分析的思考を発達させ、全体よりも部分的な把握に長けており、直接的表現をする傾向がある。これらの特徴1つ1つは、1つの文化を構築するに当たって全て関連している。異文化理解のためには自身の文化と相手の文化を理解することが不可欠であり、生活に根付いている広告は文化を学ぶための身近で有効な手段となる。広告はこれからも人々のコミュニケーションツールとして在り続け、異文化理解はますます重要なものとなるだろう。