A Study of Japanese Students' Attitude toward Discussion
( 討議における日本人学生の態度の研究 )

57期 AII 類 T. Y.

Introduction

我々日本人は、他国の人と比べ、人前ではっきりと自分の意見を言わない傾向がある。さらに、そのような傾向は英語での会話になるとますます顕著に見られるようになるが、それはいったいなぜなのか。「日本人は恥ずかしがりやだから」ということはよく言われることであるが、私たち日本人が人前で自分の意見を言うことをためらってしまう理由は単にそれだけではないと思う。その理由を明らかにすべく、本論文では、日本人大学生とアメリカ人大学生へのアンケート調査を通して、日本人大学生の意識の特徴を分析した。さらに、その意識の根底には、どのような文化的な背景があるのかについても考察した。

Chapter 1

実施したアンケート調査の結果を示しながら、会話における日本人学生の意識の傾向を分析した。その主な結果として、最も苦手な英語のスキルとして「話すこと」を選んだ学生が半数にもあがったこと、普段のおしゃべりは好きであるが、いざ多くの人の前で話さなければいけない場面では口を閉ざしてしまうこと、自分の意見を主張したり、人の意見に反論したりするよりもむしろ互いの意見を共有して妥協点を見出そうとする傾向があることなどが明らかになった。

Chapter 2

Chapter 1で示したような日本人独特の意識はどのような文化的背景が影響しているのかを考察した。そこには、我々日本人が代々受け継いできた礼節の文化というものが存在することや、討議における意思決定では話し手と聞き手が互いの気持ちを推し量りながら会話する中で、誰の意見というでもなく結論に到達する会話の雰囲気があること、さらにその「雰囲気」(最近で言うところの「空気」)というものが良くも悪くも会話を支配する絶対的権力となっていることなどを明らかにした。

Conclusion

日本人が人前ではっきりと意見を言えない理由は、実に多く存在しているが、場の雰囲気を強く意識する日本人にとっては、活発な会話の雰囲気というもの作っていくことがより生産的な議論をするために重要であると結論付けた。

参考文献:
ルース・ベネディクト 『菊と刀』(講談社、2005)
土居健郎 『「甘え」の構造』(弘文堂、1980)
土居健郎 『続「甘え」の構造』(弘文堂、2001)
山本七平 『日本人とユダヤ人』(山本書店、1970)
山本七平 『「空気」の研究』(文芸春秋、1977)
石原慎太郎・盛田昭夫 『「No」と言える日本』(光文社、1989)
斎藤孝 『ハイライトで読む美しい日本人』(文芸春秋、2005)
杉本えつ子 『武士の娘』(筑摩書房、1969)