Short Stories

短編小説案内
前口上

 今から10年ほど前(正確には1987年)岩波文庫が創刊されて60年を迎え、それを記念して岩波書店のPR雑誌『図書』で「私の三冊」と称する企画が組まれた。その翌年には今度は岩波新書創刊50年を記念して同様の企画がもたれた。各界の著名人にアンケートを出し、心に残っている三点を短評を添えて上げてもらうというものであった。これが私にはなかなか面白かった。「へえーっあんな人がこんな本を読んでいたのか」と驚いたり、こちらも読んだことのある本だと、「こいつ、なかなかわかってるじゃないか」と妙に肩入れしたり、逆に読んでいない本だと、「しまった、やられた、ぜひ読まなくては」と読書欲を刺激され、読みもしないのに、何十冊と買い込んだりしたりして、見事に岩波書店の企画にのせられてしまった。おそらくあの「私のお薦め3点」企画で、岩波文庫や新書の売り上げは少しは伸びたのではないだろうか。あの企画につられて未読の岩波文庫・新書を買い込んだのは、おそらく私だけではなかったろうから。さらに三匹目のドジョウをねらってか、翌々年(1990年)には岩波少年少女文庫創刊40年記念として今度は『岩波少年文庫』から一冊選んでもらう企画が実現した。さすがにこのときは、少年少女文庫ということもあって、こちらの熱もそれほど上がらなかったが、岩波のたくましい商魂ぶりには感心した。それはそれとしてなかなか楽しい企画だった。

 この手の企画は何も『図書』だけに限ったことではなく、今は廃刊となった日本初の書評雑誌『リテレール』でも盛んに取り上げられたし、他にも『幻想文学』や『国文学』などでも同様の企画が編まれた。『リテレール』の編集者K・Y 氏はことのほか「私のベスト10」ものがお好きらしくて、『リテレール』以前にも角川文庫から『読書の快楽』という、ベスト10に徹した文庫を出されている。副題に「ブックガイドベスト1000」(ベスト1000だよ、10じゃないよ)と謳い、いろんなジャンルの第一人者に各ジャンルのベスト50ないしはベスト30を上げてもらうというもので、これまた大いに楽しまさせていただいた。おかげで、そのときもいろんな本を買わされることになったが。

 とにかく「ベスト10」ものは面白い。それで、このページではそれに似た類のことをして今時の学生の皆さんの読書案内に供したいと思います。ただし、当方記憶の引き出しが次第に錆びついてきており、幾らかでも引き出せればまだいい方、中にはすっかりあけようにもあかない引き出しもあり、したがって、以下に紹介する作品は現時点での(思いつくくままの)お薦め10点であることをお断りしておきます。


短編小説10編(日本編)

短編小説10編(英米編)

(ついでに)岩波新書10冊



Eng. Home
akiko-brand